認知症のある方に対して
食事以外の場面で食べ方を練習することもあります。
介助に対して適応することが難しい方もいるのです。
自力摂取を目指す方が良い方もいます。
特に
前頭側頭型認知症のある方や
性格的に意思表示がきっぱりしていて
自主独立の生き方をしてこられた方は
介助というカタチで他者の介入をすることを嫌がります。
特性の判断についても
介助していればわかるものです。
「もしかしてお若い頃からご自身の考えを明確に持った
すごくしっかりした方でしたか?」
「もしかして慎重な方でしたか?」
とご家族に確認すると
「えぇ、そうなんです」「その通りです」と驚かれることもよくあります。
こちらの介助への反応の仕方
例えば口腔ケアへの拒否の仕方も評価の根拠となる大切な情報です。
「拒否=問題」として捉えたり
「拒否=辛い、困った、嫌」としてしか受け止められないと
大切な情報を取りこぼしてしまいます。
そのような場合に
食環境調整として、
イマ、ラクに、食べられる対象を適切に選択することが大切です。
認知症が進行すると
impairment面への直接的な抽象的なリハは難しくなります。
例えば、舌の突き出しや左右へ動かすなどの個別の動きを
セラピストの指示通りに動かすことが難しくなります。
だからといって、リハができないわけではありません。
disability面へのアプローチなら可能なのです。
結果として、舌の多様な動きが担保できるようになれば良いのです。
セラピストは直接介入せず
食べる対象を適切に選択することで
認知症のある方が対象に適切に対応することを促す
つまり、2項関係でのリハを行っているのです。
認知症のある方の食べ方のリハも身体的なリハもポイントがあって
それは「3項関係化しない」というものです。
3項関係というのは
「指さし・手さし」の記事 で説明してありますのでご参照ください。
食事とはまったく関係のない状況で
「舌を前に出してください」という指示に従って行動してもらう
ということは
「舌の動き」をその方の身体から切り離して対象化させる指示です。
「自分」と「舌の動き」と「セラピスト」という3つの対象、3項関係を認識・実行することは難しくなってくるのです。
自身の身体の動きには、敢えて着目させない。
手続き記憶を活用することがポイントなので
自然に、無意識に、身体を動かせるように
身体の動きは身体に任せられるように
手続き記憶の良い面を引き出せるように
エラーレスラーニング、誤りなし学習が大切です。
頑張らなくても食べられる!食べられた!という体験を積み重ねます。
そのために
「何を食べるか」の選択が重要です。
2項関係でリハを実施する
外から見ていると、ただ食べさせているだけ
って見えるかもですが
その裏にはたくさんの思考過程を踏んでいます。
私がよく使っているのは
「かっぱえびせんの小袋4連タイプ」と「アイスの実」
いずれもスーパーで100円前後で購入できます。
いざ必要な時にすぐに対処できるように
控室の冷蔵庫にストックしてあります。
口腔期の練習でソフト食前段階にある方には、「アイスの実」を使います。
その方に応じて、1口量を1粒の1/4カットにしたり、1/2カットにしたり、1粒へと段階づけます。
口腔期の練習でソフト食を卒業できそうな方には、「かっぱえびせん」を使います。
その方に応じて、1本を1/3 にしたり、1/2にしたり、1本そのままで提供したり段階づけます。
詳細に観察できれば
明確な洞察が可能となり
細かな食形態の選択ができるのです。
外から表面だけ見て
「ただ食べさせてるだけじゃん」
という人が私の行っていることを再現できないのは
観察の量的・質的な違いにあります。
わかる人にはわかるけど
わからない人には、どう説明したってわかりようがないのです。。。
「わっかるかなぁ〜?わっかんねぇだろうなぁ〜」
というわけです (^^;
今はまだ少数派のわかる人たちが
実践してその知見を蓄積し広めることで
何十年か後の対応が大きく変わることを確信しています。
スプーンテクニックという言葉がない30年以上前から私が提唱してきたことが
今、多くの人の手によって広がりを見せているのと同じように。
最近のコメント