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ケアの幅が広がる知識


 

・記憶の3過程 

 

再生と再認

 記憶の思い出し方に関する分類で
 再生とは、自ら正しく思い出すことができる
 再認とは、自ら思い出すことはできなくても正解を提示されれば
 正しく思い出すことができるという意味です。

 認知症というと
 再生の可否だけ確認して
 再生できないと「認知症だから、思い出せないよね」と判断して
 再認の可否を確認することをしないケースも散見しますが、
 それはあまりにももったいないです。

 再生できなくても再認できる方は大勢います。

  HDS-R7点の方で帰宅要求がある人に対して
  再認できる方であれば、きちんと入院の経緯と心配している事柄について
  説明することで納得されていました。
  ただ、納得したことも忘れてしまうので同じ説明を繰り返していましたが
  ある時に「あなたに前もこうやって教えてもらったわよね」
  と言われたことがあります。
  再認していることを再認しているのです。

  ところが
  中には再認できない方もいます。
  再認できない方に対していくら説明しても思い出すことはできません。
  それどころか、言いくるめようとしていると誤認するかもしれません。
  このような場合には、バリデーションが有効です。
  バリデーションとは、
  事実ではなく感情に対して焦点化し共感していく手法です。

また、再認にも段階づけがあります。
言葉での説明で再認できる方もあれば
視覚的情報によって再認できる方もいます。
視覚的情報もより体験に基づいた詳細な情報が必要なこともあれば
体験そのものを通して再認できることもあります。

 リハ室への移動を嫌がる、デイのお迎えを嫌がる
 という方の場合には、言葉だけの説明では
 リハ室やデイがどんな場所なのか、何をするところなのかイメージできず
 不安になっている場合が少なくありません。
 その方にとって再認しやすい情報が何なのかを押さえておくと
 余分な不安や拒否を生じさせずに済むということが多々あります。

 

ぜひ、再生の可否だけではなくて
再認の可否も確認してみてください。
そして、その方が再認しやすいのは、どんな情報なのかも把握しておくと
対応の工夫の幅がグンと広がると思います。