私ならこう答える@OTジャーナルQ&A

OTジャーナルに原稿を書き掲載されたのが55巻4号です。
三輪書店さんから掲載誌が送られてきたので
せっかくですから久しぶりに全部読んでみました。

そこで目に止まったのが
「OTジャーナルの仕事論 職場の雰囲気を変えたいー教えて先輩」
手技や手法でぶつかり、職場の雰囲気がギスギスしています…
という若手作業療法士からの相談に、大御所OTが答えるというコーナーです。

OTジャーナル55巻4号384p.に掲載されている相談内容を
原文のまま引用しますと。。。

新卒から回復期病院で働いている3年目のOTです。対象疾患は脳卒中や整形外科がメインです。
リハのメーティングが手技や手法のぶつかり合いになり、なかなか話が進みません。自分の担当患者のリハについてもA先輩から、「〇〇のほうがいいよ」とアドバイスされれば、B先輩からは「△△をしていったほうがいいよ」と発言があり、混乱してしまい、せっかくのアドバイスも活かしきれていません。どちらかに肩入れして職場の空気が悪くなり、働きにくくなるのも嫌なので、先輩から深く学ぶことができません。この職場で成長できるのかと不安になります。
この状況を変えていくには、どう立ち回っていけばいいでしょうか?先輩方それぞれ手法や手技をおもちであるのはわかるのですが、共存しながらギスギスした空気をなくし、もっと患者主体のミーティングがしたいです。

ほうほう。。。と思いながら、大御所と言われているOT4氏の回答も読み進めていきました。
私の感想は、う〜ん。。。隔靴掻痒。相談者がもし本当に悩んでいるならどう思うだろう?と感じました。
そこで、自分なら何と回答するか、考えてみました。

「自分の悩みを問い直せ」

教育工学の沼野一男先生は「問い」の重要性を問われていました。
晩年の授業では、事前に配布した資料を学生に読ませ、質問を提出させていたのだそうです。
内容のない質問には「レイジークエスチョン」(怠惰な質問)と指摘されていたとか。

相談者の質問には、表向きの相談の文面から本音の相談が透けて見えます。
せっかく大御所と呼ばれているOTに答えてもらえるのだから本音で相談しないともったいないのにと感じました。

相談者のリハのミーティングがどのような進行の元に行われているのかは不明ですが
私が感じた相談者の本音はこちらです。

3年目の相談者がケース報告をして、それに対して先輩から複数の手技・手法を勧められて終わってしまう。
ケース報告に対してもらったアドバイスがよくわからないし、有益と感じられない。
手技・手法に走らずに有益なアドバイスが欲しいし、そういうミーティングだったらいいのに。
でもそんな指摘をして先輩に睨まれたら嫌だし。
今まではどうにかかわしてきたけれど、派閥になんか入りたくないし、かといってはぐれるのも嫌だけどどうしたらいいのかわからない。

違うかな?

相談者の質問には
全く次元の異なる複数の質問が錯綜しています。
自分がOTとして成長したいのか
ミーティングの場に不満があるのか
職場での立ち回り方を心配しているのか
何が優先なのか、よくわかりません。

文面通りに読んで
「ミーティングがミーティングとして有益・有効な場になって欲しい」
と願うのであれば
まずは管理者である上司に相談すべきです。
「手技・手法の勧誘のような場になってしまっている気がする」
心ある上司であれば相談者の意図に共感してくれるはずです。

ただし、そのような現状が既にある、ということですから
もしかしたら当の上司が手技・手法の権化と化しているか
もしくは、人は良いけれど管理者としてはあまり有能ではないのかもしれません。

そのような場合であっても
相談者が今すぐにできることはあります。

それは、自身のケース報告をもっと練り上げることです。
ケース報告が曖昧であれば、手技・手法という総論的なアドバイスになりがちです。
相談者が明確なレポートを作成し、質問を明確化して臨めば
アドバイスも具体的限定的であることを要請することになります。

良い質問は良い答えを引き出します。

仮に、良い質問をしたのに良い答えが返ってこなかったとしても
良い質問ができたのであれば、今度は自分自身でその答えを探すことができます。
今は、研修会はあちこちで山ほど企画されています。
論文も本も多数出版されています。
本当に答えを探そうと思えば、探す場はたくさんあります。

「この職場で成長できるのかと不安になります。」
「どう立ち回っていけばいいでしょうか?」
などと言っている場合ではありません。

OTとしての成長は自助努力です。
職場は、個々の職員の成長を応援はしてくれても
在籍していれば、黙っていてもオーダーメイドで成長させてもらえるわけがありません。

私の答えは
「自分の悩みを問い直せ」です。

2 個のコメント

  1. 辞め元OTジジイの「ごむてつ」です。私も私なりに回答を考えました。

    佐藤さんが言う通り、やはり自分が成長するためには受け身、依存的ではダメで、積極的に攻めの姿勢で行くべきです。学生ならまだしも職業人なら尚の事です。
    我々の頃に比べて今は、書籍やビデオなどの教材や、講習会なども比べ物にならないほど充実しています。

    佐藤さんが言うように、「自身のケース報告をもっと練り上げること」は大事です。ほぼ全ての日本の精神科医の症例研究は100年前のフロイトの足元にも及びません。読みもせず、読んでも理解せず、批判、非難、否定、否認してますけど。

    「他人と過去は変えられない」
    だからこそ他者に期待する前に、まず自分が変わり未来を変えるべきです。それが難しいので、心理療法等では過去の現在・未来に対する影響を変えることを目標の一つとしているわけですが。
    人間関係が悪くなる理由の大半は、自分が変わらず相手に変わることを要求したり期待することです。

    どんな環境でも成長するかどうかは自分次第ですが、成長のために環境を変える積極性も必要でしょう。自分の居場所は自分で作るしかありません。
    「攻めの一発、守りの百発に勝る」「惰性の百回、やる気の1回に如かず」
    アドバイスされるのではなく、むしろアドバイスさせる、指導をもぎ取るくらいの気持ちで。

    どんなアドバイスでも、たとえ間違っていても役立てることはできます。
    あの先輩は、何故に、どういうつもりで、どう考えてあんなことを言ったのか?なぜどこがどう間違っているのか?そうしたことを考えるのも大いに勉強になります。
    いずれにしてもアドバイスは鵜呑みにするのではなく、よく理解して自分のものにして役立てることが肝要です。

    「組織論とは詰まるところ構成員の皆が同じ方向を向いていることだ」
    専門家でもある知人の言葉ですが、なるほどと思いました。そうあれば考え方や方法、思想や信条、立場や役割が違っても、性格が合わなくても、ギクシャクしたり険悪にならず上手くやっていけるはずです。
    同じ方向とは、民間企業なら業績を上げる、利潤の追求といったことかもしれませんが、医療ならもちろん患者が改善する、健康に幸福になることを目指すべきです。

    「和をもって尊しとなす」べきですが「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」です。

    上手く立ち回ることができても人間関係は良くなりません。
    人間関係はむしろお互い純粋な気持ちで、本音で語る方がうまくいきます。上手く行かない場合はむしろ夾雑物が入り込んでいるからです。例えば「良く思われたい」「相手を貶めたい」など、むしろ相手を支配しようとしている。お互い様ですが。

    美輪明宏さんが、ママ友は友達じゃない、職場の人と仲良くする必要はない、むしろ距離をおいて協力関係をつくるべきだ、てなことを言ってましたが。(うろ覚えだけど、知らんがな)
    先輩、同僚だけでなく、多職種、患者や家族とも基本、協力関係であるべきです。非協力的な何かが入るとうまくいきません。

    「日本人の殆どは議論ができない」と言われていますが、実際にOTもそうだと思います。私はOTがまともな議論をしているのを見たことがありません。

    モノづくりやIT、AIなどのデジタル・テクノロジーだけでなく、組織やコミュニケーションの面でも日本は完全に立ち遅れています。欧米はもとよりアジアの「開発途上国」とされていた地域からも完全に遅れ、取り残され、今更追いつくことも不可能でしょう。もはやOTの世界でも今や日本は後進国では?

    とにかく攻めの姿勢で行きましょう。「仕事はやったヤツが勝ち」です。
    こうしたことはベテランだろうが新人だろうが学生だろうが関係ありません。

  2. ごむてつさん、コメントありがとうございます。

    >どんなアドバイスでも、たとえ間違っていても役立てることはできます。
    そうなんですよね。
    「学ぼうとすれば、いつでもどこでも学ぶことができる」とは「マスターキートン」に出てくる言葉ですが、私は若い頃は必死でした。

    準公的機関に就職したのでお給料は高くない中でも
    本を読みあさり、研修会に行きまくり、良いと言われたものは全部試しました。
    研修会に参加した時には、何でもいいから学んで帰ると心に決めていました。
    もちろん、研修会の内容を学びたいから参加するわけですが、当然がっかりすることもありました。
    そのような場合でも、例えば研修会の運営のしかたでもいいし、
    参加者の質問の仕方や内容でもいい
    講師の話のしかたや構成も含めて。。。
    なんでもいいから、必ず一つは得るものを持って帰ろう
    自分の学びにしようと思っていました。
    良いところは吸収・模倣し、良くないと思ったら自分はしないように戒めとしました。
    その時にまさか将来自分が研修会の運営をするとも講師をすることになるとも、微塵も考えてはいませんでしたが。。。

    理想は語るものではなく、実現していくものです。
    その過程において、努力すれば願いが叶うわけではありませんが、努力したことは決してムダにはならないとも感じています。

    ごむてつさんはご存知でしょうけど
    マハトマ・ガンジーの言葉をここに記しておきます。
    『 You should be the change that you want to see in the world. 』
      あなたがこの世界に望む変化にあなた自身が成りなさい。 

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