指さし・手さしというのは
もっと活用されて良いコミュニケーションツールだと考えています。
と言うのも
声かけにジェスチャーを添えることの重要性については記載してありますが
指さし・手さしというのは
言葉の意味・概念を共有するためにも活用できます。
前頭側頭型認知症で
言葉の意味理解が難しくなったり、発語することが難しくなることもあります。
そうすると、その方の意思や気持ちを確認することが難しくなってしまいます。
日常生活でも場面転換時などに理解できなくてどうしたら良いのかわからずに
不安になったり常に介助を要するようになったりします。
そのような場合に
指さし・手さしが可能であれば
その方が行きたい方向を指で指し示すことができると
その方向にある場所、トイレやお部屋やお散歩などを
介助者が推測しやすくなります。
お食事のために食堂へ行ってほしい時には
「食堂へどうぞ」と言いながら食堂の方向を指し示せば
理解できてお一人で行動することができる場合もあります。
指さし・手さしというのは
概念を言葉の代わりに伝えることも可能です。
逆に言えば
指さし・手さしの理解ができないとなると
声かけだけで行動を促すことは難しいので
動作介助が必要だということも言えます。
例えば
よくあるのが、「〇〇さん、あちらへどうぞ」と手であちらを指し示しているのに
あちらを見てはくれずに、こちらの顔をじっと見ている。。。というケースです。
この状態は、3項関係の指さし(認知症のある方・私・あちら)
が成立していないので
「あちら」という概念を認知症のある方と私とで共有することができない
ということを意味しています。
このような場合には
あちらへ一緒に行きましょうと言って付き添うことが必要となります。
ちなみに
指さしにも発達段階があるそうです。
最初は自分と対象を結びつける2項関係の指さし
・小さな子どもが犬を見ながら「ワンワン」と言うような場合です。
(子どもと犬の2項関係)
次に3項関係が生じます。
・小さな子どもが犬を見ながら「ワンワン」と言いながら母親を見ます。
(子どもと犬と母親)
最後に3項関係が成熟します。
・母親が「ほら、あそこにブーブーが走ってるよ」と走る車を指さしながら子どもを見ます。
その時に、子どもは母親ではなくて走る車を見ることができます。
(母親と母親が指さした車と子ども)
レクやリハと称して
「風船バレーなら簡単だから」と言う人もいますが
3項関係が成立していない認知症のある方にとっては困難極まりない活動です。
「他にも
何もしないと認知症が進行しちゃうから
何かやらせなきゃ。
〇〇なら簡単だからできるんじゃない?」
と言う人は少なくありませんが
構成障害や遂行機能障害、近時記憶障害や3項関係が成立していない
認知症のある方にとっては、とても難しい場合が多々あります。
そのような発言をする人に悪気があるわけではないでしょうが
難しい、できないことをやらされる人の気持ちを考えてほしいと思います。
逆の立場で「数学は論理的思考力のトレーニングに向いているからやりなさい」と言われて
あなたは前向きに楽しく行えますか?と言いたくなることもあります。
やれば良いというわけではないのです。
やらないことのデメリットだけでなく、やらせることのデメリットについて
もっと鋭敏になる必要があると考えています。
意味性認知症や進行性非流暢性失語のある方には
発語ができているうちから
指さ氏や手さしを添えて声かけをしてみるといいんじゃないかなと思っています。
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