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援助の言葉・意思表明の言葉

 

援助の言葉・意思表明の言葉と言われても
「?」と思われるかもしれませんが
実は、既に私たちは無自覚のうちにこれらの言葉を使い分けています。

例えば
食事介助の場面で
いろいろな職種のたくさんの職員と場面を共有してきましたが
誰一人として
「〇〇さん、私はご飯を食べさせますよ」
という声かけをした人に遭遇したことがありません。

みんな
「〇〇さん、お食事しましょう」
「〇〇さん、ご飯を食べましょう」
「〇〇さん、ご飯」
と援助の言葉を使っています。

援助の言葉とは
相手の立場に立って
相手がこれからどうなるか、どうするのかを伝える言葉です。

意思表明の言葉とは
相手にこちらの意思を伝える
こちらがこれから何をするのかを伝える言葉です。

「食べさせますよ」
なんて言われたらびっくりして怖くて
おちおちご飯を食べていられなくなっちゃいそうです。

「そんなの、当たり前じゃん!」
って思うかもしれませんが
この、援助の言葉と意思表明の言葉は
ケアの分野においては、あまり吟味されずに無自覚に使われています。

例えば
車椅子に乗っている方に他の場所に移動していただく時に
あなたは何て言っていますか?

「車椅子を押しますよ」
って言っていませんか?

これは意思表明の言葉です。
「私があなたの車椅子を押します」
と私がこれから何をしようとしているのかを
相手に伝えています。

言外に
「私があなたの車椅子を押しますから驚かないでくださいね」
という意味を含んでいますが
認知症のある方では
言われたことだけを受け取り言外の意味までは受け取れなくて
突然車椅子を押されたと思ってびっくりして怒り出してしまう方もいます。

そのことを理解・洞察できない職員は
「ちゃんと私は声をかけたのに
 どうして怒られなくちゃいけないの?
 易怒性のある○さんについてどうしたら良いのか
 ケースカンファしましょうよ」
などと言ってしまうことすら、起こることもあり得ます。

もちろん
相手が意思表明の言葉を聞いても理解・対応できる方であれば
意思表明の言葉を使っても大丈夫です。

肝心なことは
目の前にいる方が
意思表明の言葉を使っても理解できるのか
援助の言葉を使わないと理解できないのか
そこをきちんと見極めて
目の前にいる方の言語理解力に応じた言葉を意図的に使い分ける
ということが職員に求められているのだということなのです。