「よっしーずボイス」記事投稿しました

 

 

神奈川県作業療法士会の公式ウェブサイトの
「月刊よっしーワールド」に記事投稿しました。

「観察・洞察から始まる対応の工夫」

今まで
食事介助や生活障害やBPSDへの対応の工夫、Activityの選択など
さまざまなテーマで講演のご依頼を受けてきました。

対象職種はさまざま
開催場所も日本全国さまざまですが
どのテーマでも必ず
観察の重要性、評価の重要性を伝えています。
考え方と対応の工夫を結びつけた説明もしています。

「観察の重要性がわかった」
「評価しているつもりだったけど、まだまだだと思った」
というご感想をいただくと本当に嬉しく思います。
 
それでも
講演終了後の質問の時に
「〇〇という状態像の人がいるんですけど、どうしたらいいでしょうか?」
という質問が出てくることもまた多いのが現状です。。。

それだけ
ふだんの臨床現場で
「〇〇という人には〇〇する」
というハウツー的な在り方、パターン化した対応で実践しているのだと思います。

また
それ以外の在り方を養成過程において
学べなかった人が少なくない
ということをも示しているのだと考えています。

  以前に、初心者向けの研修会テキストで
  「帰宅要求のある人にどう対応するかグループワークしましょう。」
  という記載を見たことがあります。

  初心者ー認知症のある方をよく知らない人に対して
  教えるべきことを教える。。。
  「帰宅要求のある方の状態を

  観て・聴いて・洞察・把握して検討・判断することを教える」
  。。。のではなくて
  「帰宅要求=どうする」というハウツー的対応、パターン化された対応を
  知識もない、技術もない人同士で考えさせる
  という最も不適切な「学習態度」を教えてしまっています。

  最初が肝心。
  初心者にこそ、きちんと「学習態度や実践の思考回路を教える」べきです。
  グループワークの効用は多々ありますが、これは最もまずい。

  効果がないどころか逆効果となってしまっています。

教員経験もあるごむてつさんは
「ちゃんと教えられないから、グループワークでお茶を濁す人もいる」
と言っていましたが (^^;;
さもありなん。。。

ちゃんとグループワークをしようと思ったら
かなりの時間を使います。
私だったら、その時間を使って「教える」「伝える」ことがたくさんありますもの。

ありがたいことに
ちっぽけな一人の人間でも
「声を上げる」ことができる世の中になりました。

岸田総理は
アフリカの諺を引いて
「早く行きたければ一人で行け。遠くまで行きたければみんなで行け。」
と言いました。

かつては私もそう思っていましたが
本当に本質からブレずに進むためには
ひとりでも進んで行くしかないこともあります。

組織には組織だからこそ発揮できるチカラがある。
同時に、組織を作ったら組織維持のために必ずチカラを用いなければならない。
状況によっては、組織を作って達成したい目的と組織維持がすり替わってしまうことも起こり得ます。

このサイトと
よっしーワールドと
ふたつの「場」を得て
本質からブレずに、まずは自分が進む。

いつか
硬直した組織ではなくて
目的達成のために、自由で緩やかな、それでいて力強い連帯が実現しそうな気がする。

そのために
まずは、私自身ができることを着実に一歩一歩。



  
  

予告:オンライン勉強会

 

 

まだ具体的な日時も概要も決めていませんが
今年度中にオンラインでの勉強会を開催すべく準備中です。

まずは
平日夜間に短時間の勉強会開催を考えています。
職種は限定せず、どなたでも参加できるようにと思っています。

テーマについて
ご希望があればコメント欄もしくはお問合せからお知らせください ☆

オンラインであれば
遠方の方でも
家事育児で自宅を離れにくい方でも
受講できる機会が増えます。

対面研修ならではのメリットもありますが
今はまだ難しい状況です。
状況が変わるのを座して待つのではなく
今、できることをできる時に。
オンラインならではのメリットを活用できるように。

 

詳細が決まり次第、こちらのサイトにてご案内いたします!

 

 

認知症は脳の病気で心の病気ではない

 

 

概念を明確に理解すること
本質を把握すること
ここからスタートすれば、自身の考えをスッキリ整理させることは可能だと考えています。

ある研修会で講師が受講者に尋ねました。
「作業療法で認知症の中核症状が良くなると思う人?」
たくさんの受講者が手を挙げました。。。(^^;

認知症という状態像を引き起こす疾患において
impairmentは不可逆的に進行していくという定義になっています。

こういうところは、作業療法士は大いに反省して修正する必要があるところだし
作業療法で何をしているのかということをもっと明確化すべきだと考えています。
逆に言えば、ここに作業療法の今後の可能性もあると考えています。

見た目として、「生活障害やBPSDが良くなる」ということは可能だと思いますが
それは、impairmentが改善されたわけではなく、disabilityが改善された結果です。

また
「認知症のある方に寄り添ったケア」とは、よく聞く言葉ですし
ケアの理念として大切だと思います。
でも、どういった言動が寄り添ったケアで、どういった言動がそうでないのか
具体的にはあまり検討されていませんよね?
検討されているとしても、心理社会的な側面に偏っていませんか?

認知症は脳の病気です。
同じ脳の病気である、脳血管障害後遺症片麻痺の方を想定して比較すると
明確になってくることも多々あると感じています。

例えば
片麻痺のある方に対して
「なぜ、その手が動かないのよ!」とは言わないけれど
認知症のある方に対して
「なぜ、同じことを繰り返し言うのよ!」と言いたくなることはあるかも?

例えば
片麻痺のある方に対して
「気持ちに寄り添う」ことをしても
優しく、言動を否定しないで接しても
麻痺が改善するわけでもなく、ADLが改善するわけでもありません。
ただ、人として、対人援助職として、当たり前のこととして行うだけです。

ところが
同じ脳の病気なのに
認知症のある方に対しては
優しく、言動を否定しないということが強調されすぎていませんか?
人として、優しく、言動を否定しないように接しても
認知機能障害が改善することはありません。
生活障害やBPSDが直接的に改善することはありません。

ただし、認知症のある方の余分な不安や混乱をきたさないように
という側面はあると思いますし
人として、対人援助職の基本として必須の態度だと思います。
そのような側面は、片麻痺のある方に対しても同様なのに
なぜ、こんなにも心理社会的側面が強調されて
本来の障害を把握するということが疎かにされてしまうのか。。。

HDS-RやMMSEをとる人は多いけれど
その結果を活用して対応を工夫している人は少ないものです。
検査結果の違いによって対応の工夫を変えている人は少ないですよね?

本来、検査は対応に活用するために行うものなのに
検査は検査
対応は対応
として切り離され
「認知症のある方に寄り添ったケア」という抽象論・総論になってしまう。
抽象論・総論だからこそ、声が大きくなることはあっても
具体的な検討が疎かになる。

「認知症のある方に寄り添ったケア」という理念を
唱えれば実践できるわけではありません。

理念をどのようにしたら具現化できるのか
ということを日々の臨床現場で具体的に検討することが必要です。

片麻痺のある方それぞれに
できること、できないことがあり
その方それぞれにお気持ちの揺れがあります。

認知症のある方も同じです。

認知症は脳の病気であって気持ちの病気ではないのだから
気持ちに寄り添うことは必須だけれど
気持ちに寄り添うだけでは
片麻痺やADLの改善に直結はしないのと同じように
認知機能障害や生活障害やBPSDにも直結はしない
ということを明確に再認識する必要があると考えています。

片麻痺のある方に
着替えをする時にはポイントがあります。
そのポイントを知らないで着替えをさせて
「着替えが大変で困っちゃう」という余分な困りごとが減るように
ポイントを知っていることには意義があります。

同じように
認知症のある方に
さまざまな対応をするポイントがあり
伝えていくことの意義があると考えています。

臨床現場で困った時に
「〇〇という状態の人がいるんですけど
 どうしたらいいでしょうか?」
というカタチの質問をしなくて済むように

自分自身で困りごとを解決する思考回路を構築することができるように

 



トランスファー全介助 → 座り方も介助

 

 

日常生活の場面そのものがリハビリテーション
ということは、ずいぶん人口に膾炙するようになってきました。

普段の生活で
トランスファーを介助する機会はたくさんあります。

その時に
ぜひ、座り方を意図的に気をつけて介助してみてください。

自分でなんとか立てる方でも
座る時には、
後方へひっくり返るかと思うくらい
勢いがついてしまって
ドシン!と音がするようにしか座れない
という方は結構多くいらっしゃいます。

座る時に働く筋肉は
立ち上がる時に働く筋肉と同じです。
ただ、働く方向が逆向きなだけで。

だから
上手に座る練習をすることは
立ち上がりの練習をすることにもなります。

ポイントは
1)静かにそっと音がしないように意識してもらう
2)身体を前傾させながら膝と股関節の屈曲のタイミングを協調させる
3)踏ん張らせず、スムーズな動きを引き出す

 

動作の自立を目指す時に
必ずしも、頑張って、踏ん張って
行うことだけが良い結果を引き出すとは限りません。

生活期にある方の場合には
きちんと介助してスムーズな動きを体験することで
身体の使い方、身体の働きを再学習できるようになることが多々あります。

 

「あるある事例集」を公開

 

現場あるあるの「事例集」を追加しました。

リハ場面、生活場面、Tips集と分けてみました。

今日現在で
・骨折後のリハ
・頚部が前屈、後屈してしまう方の食事介助
をアップしています。

今後も随時更新していきます! 

 

頚部後屈してしまう方の食事介助

 

頚部後屈してしまう方もいらっしゃいます。
そのまま食事介助するのは、誤嚥のリスクが高くとても危険です。

じゃあ、どうするか

たいていの場合
後屈しないように
頚部を前屈方向へ押し出すように介助してしまいがちです。

でも、そうすると逆効果
作用反作用の法則で
無理に力を入れて前方に押してしまうと
逆に後方に同じ力で押し返されてしまうので
かえって頚部後屈を強めてしまいかねません。

そのような時には
盆の窪と呼ばれている、後頭部〜首の間にある凹みのところで
頭の重さだけを支えるようにします。

しばらくすると頚部後屈方向への抵抗感が減るのを感じると思います。
そうしたら少しだけ前屈方向へ動かして、頭の重さだけを支えるようにします。

ポイントは
「修正するのではなく助ける」

これって、何事もそうだなーと感じていますが
あるべき正しい在り方を目指して修正しようとするとかえって良くない結果となってしまう。
今、困っていることを助けようとすれば結果として望ましい在り方へ近づく。

頚部後屈している方は
頭の重さを支えてみてください。

そして
頚部前屈してしまう方と同様に
そのような状態になるには必然性があってのことなので
根本的な対応として、必然性を探ることも同時に進めてください。

 


頚部前屈してしまう方の食事介助

 

頚部前屈してしまう方の食事介助は大変です。
お食事だけでなく、水分やお薬を飲んでいただくのも一苦労。。。

ついつい、おでこを押さえて顔を上げさせて介助するけど
痛そうでかわいそうに思っても
そうしないと顔が下を向いてしまって食べさせられない。。。

そんな風に悩んでいる方必見

頚部前屈してしまう方は
必然があってそうなってしまうので
その必然を解き明かすことがポイントなのですが
お食事は毎日毎食のこと。
今すぐの対処が必要ですよね。

そんな時は
顎の下を介助者の片方の手で下から支えてあげてください。

万が一に備えて
おしぼりを持ってから顎の下で支えるともっといいかも。

おでこを手で押さえるよりも見た目的にもずっといいし
何より力がほとんどいらない。

今すぐの対処として、すぐに支えるTipsですが
並行して、頚部前屈してしまう必然を解き明かすことも忘れずに ☆

 

 

ペットボトル・リリアン

 

女子なら一度はやったことがあるかも?
リリアン編み (^^)

原理は同じで
ペットボトルと割り箸で作ってみました拡大バージョン。

あらかじめ、道具を作っておけば
毛糸を用意してすぐに取り組んでいただけます。


< 特徴 >
  ・工程が手続き記憶にある
  ・毛糸をかけるという1工程のみ覚えられれば
   連続、反復して行うことで実施可能
  ・仕事的要素が強め
  ・連続、反復した工程なので対人関係の媒介として活用できる

< 向いている方 >
  ・両手の協応が可能
  ・毛糸に馴染みがある
  ・表現を楽しむ方よりも、仕事的要素を好むかたや
   活動を媒介として対人交流を好む方に向いている

仕上げは指編みと同様で
輪を作りながらマフラーにしたり、バッグや膝掛けができます (^^)


ひも三つ編み

 

  
キャッチボールは
「やりとり」の象徴の1つとして、
どんな分野でもよく使われているAct.の1つだと思います。
でも、相手めがけて投げることや
投げられたボールを落とさずにつかむことができないと
導入するのは難しいですよね。
 
私も風船やバランスボールで代用していた時もありますが、
それでも難しい方がいらっしゃいます。
疎通困難で注意の転導性が著明だったり、
対象との距離があると認識しづらくなってしまう方など…
同じような経験のある方も少なくないのではないでしょうか。

そこで、使えるアイテム、ひも三つ編み登場 (^^)

荷造りしたり、応援用のポンポンを作る時に使うスズランテープを使います。

まずは、相手にテープ端を持ってもらい、私が三つ編みをします。
この時に、私が編む作業に同調して
テープ端を引っ張りながら持つことができるかどうか…がポイント。
これができるということは、言葉は介さないけれども、
相手を認識して相手との恊働作業をおこなえるということを意味します。

疎通困難で
注意集中ができなくて
失敗への予期不安が強く
情緒不安定な方が
他者との恊働作業に集中することができるなら、
もうそれだけでも十分だと思います。
非言語のレベルでの「やりとり」という体験をする…
ということの意味はとても大きなものがあると感じています。

言語的な意思疎通が困難であったとしても
私が編みやすいようにひもの引っぱり加減を調整する方もいます。
常に一定のテンションでなく微調整しているのです。
また、長い時間続く時には、
疲れないようにひもの持ち方を変えたりという工夫をする方もいます。

非言語ではあるけれど
非言語だからこそ、わかることもあります。

それだけではなくて、
認知症のある方の場合、さらにその次に進むことができる場合も多いのです。
ひもを触ったり、結んだり…手いたずらを通して
「三つ編み」することを思い出す場合も多々あります。
三つ編み…おさげ髪を結ったり、わらじを編んだりと
昔の人は「編む」ことはなじみのある動作です。
手続き記憶を活用しやすいのです。

この時にポイントはいくつかあります。

まずは、
疎通困難な方や注意集中困難な方には、
ウォーミングアップの過程を怠らないこと。です。
 
挨拶であったり、笑顔でのアイコンタクトであったり…
使う材料を手いたずらする…なんてことも制止したくなるかもしれませんが
手で材料に触れるということは
重要な対象認識の一過程でもあるので、大切にしていただきたいと思います。
対象者の傍らに寄り添っていれば、
まだ「その時」ではないのか、
あるいは導入開始の時なのかといったタイミングがわかると思いますので、
そのタイミングを逃さずに介入してみてください。
 

 
また、対象認識が低下している場合には認識しやすいような工夫も必要です。

例えば、スズランテープを3色使うと重ね方が明確になりますし
言葉で「左端のひもをもって…」と説明するよりも、
「赤いひもをもって…」と説明したほうが理解しやすくなります。

「左端」という言葉は
相対的な説明ですので
1つの場面内の複数の対象を認識して
さらにそれらの相対的な関係性を認識できていないと理解できません。
このような説明は認知症のある方にとってハードルが高すぎます。
一目瞭然という場面設定、作業に語らせるという場面設定を工夫することが重要なのです。

そして、何よりも重要なことは
三つ編みができるように
という観点から、引き算で対象者を見ない。ということです。

ここができないから三つ編みできない。
ここを頑張ってできるように。。。ではないのです。
それでは、三つ編みを「させる」ことになってしまいかねません。

非言語での恊働作業ができるだけでいい。
1人でひもで手遊びに集中できるならそれでいい。
三つ編みできたら「もっと」いいね。
というように、今を否定せずにプラスを積み重ねていく「みかた」です。

スズランテープは材料費が安い。入手しやすい。

そして、何よりもシンプルな工程で段階付けや切り替えをスムーズに展開しやすい…というところが大きな利点です。

出来上がった三つ編みは
空き缶の周りに貼り付けると
多少の歪みがあっても、かえってその歪みが味わいに変化します。

どの分野でも使われているキャッチボールですが
キャッチボールが象徴している「はたらき」を活用したAct.として「ひも三つ編み」をご紹介しました。

 

  

* ちなみに・・・
 最後の写真のお花は、ずーっと前に「伊藤家の食卓」という番組で紹介された
 マニキュアで作ったお花です。

 作り方は、手芸用の細い針金を任意の形にして
 針金(例えば、楕円形)と針金の間を
 マニキュアを浸した筆先を横に寝かせて、隙間ができないように
 ゆっくりと渡していきます。
 乾いたら組み合わせて、お花や葉っぱの形にまとめて仕上げます (^^)

 仕上がりは、とても綺麗なんですけど
 両手の協応やマニキュアを浸した筆の動かし方が結構繊細な動きが要求されるので
 適応できる方はかなり限定されてしまうように感じました。

 

 

身体が硬い!

 

 

頚部が前屈してしまい
食事の時には、おでこを支えながら介助されていたAさん。

この表面的な事象だけ見て
「どうしたら頚部が前屈せずに、顔を上げて食べられるだろう?」
と考えても適切・的確な対応はできません。

 まずは、きちんと観察・洞察せねば。

 そして、触って身体の状態をきちんと確認せねば。

頚部が前屈するのは、筋が弛緩している場合もありますが
逆に、硬くなってしまっていて顔をあげたくてもあげられない
というケースもあります。

Aさんの場合は後者でした。

Aさんは
車椅子を使用し、食事を含めてADL全介助ですが
脳血管障害も骨折の既往も糖尿病や高血圧や循環器の既往もありません。

まず、Aさんにリハ室のプラットフォームマットに座っていただきます。
車椅子からトランスファーする時に
「うっ!重っ!」
股関節・膝関節が屈曲したままで足でご自身のお身体を支えることができません。
マットに座っていただき、靴を脱がせようとすると
お身体がコロンと後方にひっくり返りそうになってしまいました。
マット上でお身体の向きを変えようとすると
まるで一本の木のようにガチガチです(体軸内回旋低下)
このような状態では、いくら寝てもお疲れが取れないのではないだろうか
と思ってしまいます。

  認知症があってもなくても生活期の方の中には
  端座位が保持できずにコロンとひっくり返ってしまったり
  ベッドの上で身体を捻る動きが出ずに全身が木のように硬くなってしまっている
  方って、よくいますよね?
  このような方の多くが、実は誤学習によるもので
  主導筋と拮抗筋の共同収縮を起こしてしまっています。

  拘縮があっても限定的であれば、適切なリハをすることで状態が改善します。
  このようなケースを筋力低下と誤認し筋力強化などしてしまうと
  逆効果になってしまいます。

「力を抜いて」と言っても
どうしたら力が抜けるのかわかりません。
まずは、「動く」体験を他動的にすることから始めます。

臥位で股関節・肩関節を緩めます。
よくあるのが、いきなりストレッチをすることですが
筋が弛緩していないのにストレッチをすると筋繊維を痛めてしまいます。

まずは、回旋運動を多動的におこないます。
抵抗感が減弱したところでストレッチを行い、可動範囲を広げます。
この運動の目的は、完全に正常な身体になることではなくて
安全・安楽・円滑な起居動作が介助下にて可能になることなので
ここはメインではありません。

股関節・肩関節の可動範囲を広げてから
骨盤と体幹の分離運動を他動的に行います。
私は座位・立位と側方へ、次に前後方向へ(冠状面)行っています。

立ち上がりの時にも
「頑張らせない」「力を入れない」ように
「膝を伸ばして」「腰を伸ばして」などの動きに着目していただくように声かけを行います。

Aさんの頚部前屈も改善され
トランスファー時の共同収縮も減弱し
端座位が保持できるようになり
臥位での体軸内回線の動きもみられるようになり
impairmentな問題は完全に解決できた訳ではありませんが
disability面の問題は、ずいぶん改善されました。

大切なことは
「正常」とされる身体状況を目指すのではなくて
暮らしの困難、生活障害を改善し
余分な困難を減らし、日々の暮らしを堪能できるように
援助することだと考えています。

Aさんのような方は大勢います。
身体、動作のプロである理学療法士や
行為のプロであり、動作との関連が把握できる作業療法士に
できることは、まだまだあると感じています。

私は
廃用は誤学習の結果として起こる。
筋力低下・廃用論には与せず、筋力強化は逆効果と考えて
共同収縮を促さないように、
動作の質をあげていくリハの実践が
認知症のある方にとっても有用だと考えています。

 参考:立ち上がり