履物の選び方

 

 
施設を利用する時には
履物を用意するようにご家族にお願いしているところが多いと思います。

介護用品店が身近になかった頃は
バレーシューズを用意するご家族が多くいらっしゃいました。
さすがに最近はバレーシューズではなく
最初から介護シューズやリハビリシューズを用意されるご家族が多くなりました。

ただ、緊急に入院された場合などは
病院の売店などで購入されることが多いと思います。

対象者の方、お一人お一人に合わせた履物をどう選ぶかって
結構難しかったりします。

踵がしっかりしているスニーカータイプであれば大丈夫
とは言い切れません。

私が履物を提案する時に確認することは、下記の通りです。
1)移動・移乗能力
2)靴の着脱能力
3)日中・夜間の行動範囲
4)経済面
5)ご本人の好み

これから順次ご説明していきます。

 

 


キュウリのあえもの

 


写真は
キュウリ・ちくわ・長芋を切って
めんつゆ・鰹節・柚子胡椒で和えたものです。

味付けを
梅干し・ポン酢やごま油に変えても美味しいです。

柚子胡椒を入れすぎちゃった時には
クリームチーズを少し入れてごまかします (^^;
それもまた美味しい (^^)

研修会のお知らせ:県央地区リハ連絡会

 

  

 


神奈川県県央地区リハビリテーション連絡会さん主催の研修会が
2022年10月21日(金)19:00~21:00にかけて
「認知症 明日からの臨床にきっと役立つ知識・考え方・対応の実際 ~事例を通して~」
というテーマで開催されます。

詳細は
県央地区リハビリテーション連絡会さんのサイト「お知らせ」をご参照ください。

受講資格については、上記お問い合わせ先にご確認ください。

 


ためこんでしまう場合はスプーン操作を見直すべき

多くの人が
「ためこんでしまう」「飲み込んでくれない」とよく言いますが
実はそれらは結果として起こっていることです。
本当は「咀嚼や送り込みに時間がかかる」結果としてためこんでしまうのです。

ところが、多くの場合に
摂食・嚥下5相に沿った食べ方の観察が為されないので
結果として起こっている「ためこみ」を問題としてとらえます。

「ためこんで飲み込んでくれない」と問題設定をすると
認知症のある方の意思や気持ちの問題として捉えられてしまいがちです。
そうすると「ためこみ」を解消するために
「好きな食べ物を提供してみよう」という発想になりがちですが
さて、それで状態が改善することはほとんどないですよね?
 
つまり、本当は問題設定が適切ではないのに
そこに気づかず、どこかにある答えを探している。。。
現場あるあるです( ^^;

ところが
「咀嚼や送り込みに時間がかかる」と問題設定すると
食べ方をよく観察してみよう、口の中をよく観察してみよう
という発想をする人が出てきます。
(本当は順序が逆なのですが)

そうすると
舌苔がびっしりで、これじゃあ味なんかわからなかったんじゃない?とか
舌が板のようにガチガチで、これじゃあ舌が動かないから
送り込みたくても送り込めないよね?
といったことがわかるようになってきます。
舌がガチガチに硬い方はたいてい頚部もガチガチに硬くなっています。

つまり
食べようとしない
食べたくないから
ためこんでいる、飲み込まずにいる
という意思や気持ちの問題ではなく

食べようとしている
食べたいけれど
食べたくても食べられなくて困っている
という状態なのですから
どうしたら、食べられるようになるか、食べやすくなるか
という問題設定が必要
なのです。

私たちの問題設定のマズさが問題だったわけです。

だとしたら、問題設定を変えてみれば良いだけです。

「ちゃんと食べてね」
「頑張って飲み込んで」
と言うのではなくて
その状態でも食べられるようになるように
送り込みができて、飲み込みができるようになるように
「何を」「どのように」したら可能となるのか
ということを観察し、洞察できるようになることがプロなのだと思います。

そのためには
接食・嚥下5相の知識が必要です。
機能解剖って本当に大事です。

舌がガチガチに硬い方でも
スプーンで下唇や前舌を押したり
頚部前屈をサポートする介助を続けていれば
ちゃんと舌が柔らかくなってきます。
柔らかくなるから、舌本来のしなやかな動きが発揮できるようになってきます。

だから
ためこまなくなるし
飲み込みもスムーズになります。

舌がガチガチな時には構音不明瞭で何を言っているのか聞き取れなかった方が
舌が動くようになったので構音明瞭にお話しできるようになる
意思疎通困難と思われていた方が実は
ちゃんと理解できていて、ただ明瞭に発語することができなかったために
表現することができていなかっただけだ
ということが後になってわかったりします。

食事介助、スプーン操作って本当に怖い。

私たちのちょっとした介助の的・不適によって
認知症のある方の能力発揮を促すこともできれば阻害することもある。
しかもそれは食事介助にとどまらない。ということなんです。

 

喉頭不完全挙上はスプーン操作を見直すべき

 


食事介助の時には
必ず喉頭の動きを毎回眼でみて確認しています。

人によっては喉頭の複数回挙上もかなりありますし
喉頭の不完全な挙上でムセずに食べているケースもよくあります。

眼で見て確認せずに食事介助するなんて
とても怖くてできません。

喉頭挙上の動きは、何の働きを見ているのかというと
喉頭蓋反転の動きを観ているのです。

 

喉頭が完全に挙上していないということは
喉頭蓋が完全に反転できていないということを意味しています。
詳細は「 摂食・嚥下5相 」をご参照ください。

食事介助の現場では
ひどいムセがないのに痰がらみがひどくなったり
誤嚥性肺炎になったりする方が必ずいるものです。
 こういった現実からも
 ムセだけに過剰に反応するのは意味がないということに
 気がついてほしいものです。

喉頭蓋が完全に反転していない
気管が完全にふさがっていない状態で
どんどん食塊を口の中に入れられたら
いったいどうなってしまうのか。。。

「 ムセない=食べ方はOK 」という誤解から
脱却する人が1人でも多くなることを願っています。

身体は構造としても生理学的にも連続性がありますから
スプーン操作の基本
・下唇もしくは前舌をスプーンの背で押す
・上唇が丸めてとりこむのを確認
・スプーンを水平に引き抜く
を実行してもらえば、
喉頭の不完全挙上がなくなり、完全挙上するようになるケースに
きっと遭遇できるはずです。

また、
上の歯でこそげ落としたり
スプーンを斜め上に引き抜くと
どうしても顎が上がってしまいます。
下の写真のように頚部後屈してしまいます。

このような状態だと
喉頭の移動距離が長くなってしまい
結果として、完全挙上できないということも起こります。

適切なスプーン操作をしていても
対象者が頚部後屈した状態のままで食事介助をしていたら
同じように喉頭の移動距離が長いために喉頭が完全挙上できない
ということも現場あるあるなので
「 頚部後屈してしまう方の食事介助 」を参考に試してみてください。

たとえ、重度の認知症のある方でも
食べ方が改善されるケースの方が圧倒的に多いのです。
もし、改善がないとしたら
もう一度「 スプーン操作を見直すべき兆候 」を確認してみてください。

やり慣れた行動、動作を違う方法に切り替えるというのは
口で言うほど簡単なことではありません。
コロナ禍の前には、日本全国各地で講演をしていました。
食事介助の研修会では、お話するだけではなくて
できるだけ、参加者間の実技を導入するようにしていました。

私の説明をうん、うん、とうなづきながら聞いていた人でも
実際に実技となると、なかなか修正できない人は少なくありませんでした。
それだけ、やり慣れた行動を違うカタチに切り替えるということは
難しいものなのです。

でも、メゲずに継続してください。
必ず、切り替わります。
重度の認知症のある方でも切り替えられるのです。

介助者側に頚部回旋したらスプーン操作を見直すべき

 

食事介助をしていると
介助する人の方に顔を向ける対象者がいます。

対象者の隣90度の位置に座って食事介助をする時には
対象者の口元に真っ直ぐにスプーン先を向けるためには
介助する人が少し手首を曲げるようにする必要があります。

慣れてしまえばなんてことはない動作ではありますが
対象者の食べ方をきちんと見ようとしないと
介助者にとって楽なように動作をしてしまいがちです。

そうすると
対象者の方が斜めに向けられたスプーン先に適応しようとして
顔をスプーン先に向けた結果
頭部が介助者の方に回旋してしまうのです。

つまり、対象者が不適切なスプーン操作に合わせてくれている
ということが起こっているのです。。。

下の写真は、私が執筆した
「 認知症のある方も食べられるようになるスプーンテクニック 」
という本の中で説明しているページです。

日総研出版「認知症のある方も食べられるようになるスプーンテクニック」p.38より

重度の認知症のある方だって
「そんな介助は食べにくいからやめてよ」とは言わずに
ご自分にできることをしてその場が少しでも食べやすくなるように
適応しようとしているのです。

でも、片麻痺のある方で非麻痺側に頭部回旋してしまうと
危険な場合もあります。
(例えば、左片麻痺のある方に、介助者が右側から介助するような場合
 麻痺している側を主に使って飲み込むことを要求していることになってしまいます)

参照:おくちで食べる.com
  「第27回 横を向いた状態での飲み込みはどう変化するか?」


 

口角から食塊がこぼれ落ちたらスプーン操作を見直すべき

食塊をとりこんだ時に
対象者の口角から食塊がこぼれ落ちるようだったら
それは、次の二つのことを意味しています。

1口量が多すぎることと
口唇閉鎖が不十分なこと

まず、スプーンに山盛り食塊をよそったりせずに
せいぜいすりきり一杯程度に1口量を減らしてください。
そして、口角から食塊がこぼれ落ちなくなるのを確認してください。

また、口唇閉鎖の不十分さについては
本来、持っている口唇閉鎖能力を発揮しやすくなるように
下唇もしくは前舌をスプーンでしっかり押して
上唇を丸めて食塊を取り込んだのを確認してから
スプーンを水平に引き抜くようにしてください。

上記二つに気をつけたスプーン操作を徹底できれば
そのうちに口角から食塊がこぼれ落ちることがなくなってくると思います。

詳細は、「 食事介助について 」の各項目をご参照ください。

  

 

引き抜いたスプーンに食塊が残っていたらスプーン操作を見直すべき

 

食事介助をしていて
引き抜いたスプーンに食塊が残っている
ケースに遭遇したことのある人は少なくないと思います。

 
スプーンは、中央がくぼんでいますから
上唇を丸めてとりこむことができないと
くぼみの部分に食塊が残ってしまいます。
 
口唇は
ただ単に閉じたり開けたりしているわけではないのです。

じゃあ、なぜ、上唇を丸めてとりこめないのか?

私たちの不適切なスプーン操作に
適応しようとして自らの食べる能力を落としてしまったのです。

上の写真のように
スプーンを斜め上に引き上げたり
上の歯でこそげ落としたりすると
上唇を丸めてとりこめなくなってしまいます。

そして、このような介助を続ければ
頚部はどんどん後屈し、体幹も後傾してしまいます。

詳細は「 基本のスプーンテクニックとコップ操作 」をご参照ください。

下唇もしくは前舌を
スプーンの背でしっかりと押して
上唇が丸まるのを確認してから
スプーンを水平に引き抜くような介助を心がけてください。

見事に食べ方が変わるのを確認できると思いますし
お身体が硬い方でなければ
スプーン操作をした時に
頚部前屈の動きが出たり
体幹を前傾する動きが出てくるのを確認できるようになると思います。

  

舌が奥に引っ込んでいたらスプーン操作を見直すべき

 

スプーン操作を見直すべき兆候として
対象者の方が開口した時に
舌が奥に引っ込んでいるのは
介助のたびにスプーンを口の奥に入れ続けてきたからです。

通常、開口した時には
舌の先は、下の歯のすぐ裏側に位置しているものです。

ところが
スプーンを口の奥まで入れて食べさせるような介助を続けていると
対象者の舌が奥に引っ込んで
ひどい時には、丸まってしまって
さらにひどくなると
舌は奥の方で上の方にも上がっているという状態になってしまいます。。。

もっとひどくなると
舌が板のようにカチンコチンに硬くなってしまいます。
そんな舌でどうやって咀嚼や送り込みができましょうか。
舌は本来しなやかに動くものです。
しなやかに動くから送り込みがスムーズにできるのです。

「ためこんで飲み込んでくれない人にどう介助した良いか」
という相談をされることも多々あります。
このような言語表現を聞くと
「ためこんでしまう」
「飲み込もうとしてくれない」
という、認知症のある方の食べ方のせいにしている介助者の意識が透けて見えるようで
とても悲しくなります。

「ためこんでしまう」「飲み込もうとしない」
のではなくて
「食べたくても食べられない」のです。
舌がカチンコチンで板のように硬くなっているから。

どんなに重度の認知症のある方でも
最初からこんな食べ方をしていたわけではありません。

だから
このような状態の方でも
適切なスプーン操作を続けるだけで
ちゃんと舌は前に出てきて、丸まってしまうこともなくなります。
板のように硬かった舌が柔らかさを取り戻すことができます。

他の職員とおしゃべりしながら食事介助するなんてことはせずに
ムセの有無や食べこぼししか、気にしていないなんてことも卒業して
対象者の食べ方を摂食・嚥下5相に則って観察しながら介助してほしいと思います。

まずは、口を開けた時の舌の位置に注目してください。

 

観察力を磨くトレーニング

 

観察・洞察の重要性については
このサイトはもちろん、色々なところで繰り返し述べています。

でも「よし、わかった!観察力を磨こう!」と思っても
思うだけでは観察力を磨くことはできません。

小さな子どもが注意された時に
「これから気をつけます」
と答えるのと一緒です(苦笑)
気をつけようという気持ちはあっても
どこをどう修正するのか具体的に明確になっていないと
行動を修正することは難しい
ものです。

じゃあ、どうしたら良いのか

答えは日々の臨床にあります。
カルテにその日の記録をする時に
形容詞・副詞を使わずに記録するように心がけます。
サマリーや他職種への伝達で記録する時にも同様にします。

転倒などのインシデント・アクシデントレポートを書くときに
転倒を発見した時の肢位を記載しようと思って
「あれ?どっちの手だっけ?」
「あれ?四肢はどんな風だっけ?」と
書けそうで書けない体験をしたことがあると思います。
「書けない」んじゃなくて「見れども観えず」だから
結果として書けない。
書くに値するほど観察できていないんです。

書くことで
観察できていないことを自覚し
具体的に観察し損ねていた部分を明確化できるので
結果として観察力を磨くことになります。

そして、この時にポイントがあります。

それは、形容詞・副詞は使わず
名詞と動詞中心に記録することです。

形容詞・副詞を使うと
なんとなくわかってるような、できてるような気分にはなっても
曖昧だから伝わらないし
現実問題として、自分自身が明確化できていない時に
形容詞・副詞を使いたくなるものなんです。

例えば
現場あるあるなのが
「ムセないようにゆっくり食事介助する」
という文言です。

「気をつけて食事介助をします」という気持ちはわかりますが(苦笑)
ゆっくりとは何に照らしてゆっくりなのか
どのくらいが適正なゆっくりなのか
全然わかりません(苦笑)

実際、そういう人は気持ちはあるのでしょうが
実践として行動としては、適切な食事介助はできていないものです。

何を判断根拠とするのか明示されないと
どこをどう観察して判断するのかわからないから
自己判断・自己修正ができないからです。

「ムセないようにゆっくり食事介助する」
ではなくて
「2回目の喉頭挙上を確認してから次の食塊を介助する」
これなら、誰にでも観察すべきポイント
どういう状態になったら次の介助をするかがはっきりと伝わります。

これって、カタチを変えていろいろなところで散見される状況ではないですか?
その他にも「優しく接する」「丁寧に接する」
ヤマほどありますよね?

明確化するのに
一番適しているのは言語化することです。
 
言語化する時に、形容詞・副詞を使わないように気をつけることで
抽象論・総論から脱却し、具体的・個別的に明確化するように
思考と観察力を磨くことができるようになります。

高いお金を払ってセミナーなんかに行かずとも
たった一人でも、今すぐに、始めることができます。

やってみると
今まで自分がいかに「わかったつもり」「やっているつもり」になっていたのか
わかるようになると思います。

私が実習生の時には
デイリーノートに対象者ごとに詳しく記録をすることが求められていました。
主観と客観を区別して書くように繰り返し指導されたものです。

最近の実習では
デイリーノートの簡素化が進み
技術の体験に比重が置かれるようになりました。

実習の過剰な負担を減らすことは必要なことでしょう。
けれど、
「書く」ことによって「思考や観察の曖昧さを自覚させる」
というトレーニングにはなっていたと思います。
そのトレーニングの機会がなくなってしまいました。

臨床家として、最も基本的・本質的であり、かつ重要な資質なのに。

負担を減らすというメリットを得た代わりに
臨床家としての基本的・本質的・重要なトレーニングを代替させる場について
どれだけ議論と対応が為されてきたのか疑問に感じています。

「ちゃんと書く」「ちゃんと観察する」のは
願えば誰でもできるようになることではありません。
気をつけようと思えば、気をつけられるものではありません。
実践としてのトレーニングが必要です。

もしも指導者がそのことを身に染みてわかっていないのであれば
残念ながら、その人は抽象的総論的曖昧な実践しかしてこなかった
ということを意味しているのです。

だから
自身の未熟を対象者のせいにして
「認知症だから仕方ない」
「認知症だから希望は聞かない」
「認知症だから。。。云々」
と言えてしまうんじゃないでしょうか?