1)下唇もしくは前舌を
スプーンの背を当ててくっと下に押します。
可能な限り、下唇を押すのが望ましいのですが
長いこと不適切なスプーン操作(口の中までスプーンを入れられる)を
されてきた方だと、口の中に食べ物が入ってくるのに慣れてしまっているため
基本のスプーン操作をしてもすぐには取り込めるようにはなりません。
そのような場合にはできるだけ舌の前方を押してあげてください。
押してあげると
頚部前屈しやすくなり、また取り込むタイミングも合わせやすくなり
自然な準備期(体幹前傾・頚部前屈・上唇での取り込み)の働きが促されます。
2)スプーンを口の中に入れすぎない
多くの人はスプーンを口の中に入れすぎています。
下の写真のように、スプーンの柄の付け根まで口の中に入れるような操作は
入れ過ぎです。
3)スプーンを水平に引き抜く
スプーンを斜め上に引き抜いてはいけません。
無意識に多くの人が斜め上に引き抜いています。
このような操作をすると舌が奥に引っ込んで丸まった状態になってしまうことも
あります。
また、斜め上にスプーンを引き抜くと自然に顎が上がってしまいます。
これでは食事介助しながら、誤嚥を促してしまうようなもので危険です。
次にコップでの水分摂取時の介助方法についてご説明します。
できるだけ、不要なトロミ剤の使用を回避して美味しく召し上がっていただきたい
と思っても、コップ介助が適切にできないと逆効果になってしまいます。
食事介助の現場では、「ムセたらトロミ」というパターン化した対応が散見されます。
実際には、摂食・嚥下5相の咽頭期ではなく口腔期に本質的な問題があることが多く
(しかも本当は、不適切なスプーン操作による、誤介助誤学習によって起こっています)
粘性を下げ、栄養と水分を経口から摂取していただくことが必要なケースが多々あります。
この時に適切なコップ介助ができることが求められますが、適切に実践できる人は
まだまだ少ない現実があります。
1)コップの縁を下唇に当てる
スプーン操作と同じく、コップの縁を下唇に当てます。
2)上唇に水分を触れさせながらコップを傾ける
上唇がセンサーになっていますので、上唇に水分が触れていることを確認しながら
コップをゆっくり傾けます。
3)1口量は身体の動きを観察しながら調整する
気をつけることは、1口量を的確に調整することです。
身体の動きをよく観察すると、体幹や頭部が後傾したり、頚部が前屈したりと
必ず何らかの動きが見られますので、それがその方の1口量を示しています。
ところが、現実には下記のような不適切なコップ介助が為されていることが多いのです。。。
コップを口角まで押し当ててしまっています。
スプーン操作と同じですね。
そして、口の中に水分入れてあげてしまっています。
しかも、かなりの量を。。。
こんな介助したら苦しくて飲みづらいですよ。
研修会などで実技で体験してもらうとみんな大反省しています。。。
認知症のある方は(ない方でも)このような介助をされても必死になって飲んでいます。
しかも、「あなたのその介助では飲みにくいので〇〇という介助に変えてください」
と言葉で説明してくれるわけではないので、口を開けなくなったり怒ったりすることだって
ありえます。
でも、そこだけ切り取って「飲んで!」「怒りっぽい」「なんで怒るの」と言ってしまう
人もいますよね。。。
知らないということは、恐ろしいことです。
「知は力なり」ではなくて「無知は力なり」と幾度思ったことか。。。
知ったとしても、適切に実践できるということは、また別問題です。
ですが
ここに記載したことは、私たち介助する側の問題です。
今すぐにでも、実行できることです。
ぜひ、基本となる技術を習得して
もう一度、目の前にいる介助を必要とする方の食べ方、飲み方を観察してみてください。
基本となる技術を適切に実践することができて初めて
認知症のある方の(ない方も)本当の食べるチカラ、飲むチカラを目にすることが叶います。
適切なスプーン操作、コップ操作は
食べ方、飲み方の評価・アセスメントの入口の扉を開く鍵なのです。
< 食べる練習にオススメ >
< スプーンの工夫 >
< コップの工夫 >
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