OTどこでズレたのか:目標設定

 

 

「OTどこでズレたのか:観察」の続編です。

目標設定で最も重要なのは
目標を目標というカタチで設定するということです。

カタチの担保がナカミの質を担保します。

いきなり内容の質を担保しようと模索する人は多いのですが
最初から適切な目標を設定するのはまず難しいものです。
その現実を見据えて、ではどうしたら良いか。。。と考えると良いと思います。

「こうすればあなたにもできます!」というのは魅力的な囁き言葉ですが
モノゴトそんなに甘くはありません。
簡単にできる、誰にでもできるのであればプロがしなくてもいいわけで。

そもそも、目標設定というのは、単に目標を設定して終わり。
目標設定だけが単独で存在するはずもなく
情報収集ー評価ー治療という一連の流れの中に生じるものなので
対人援助職にとって簡単なわけがないのです。

  このあたり、情報収集も評価も治療(対応・関与)も目標も
  本来は一連の流れの中に存在するはずなのに
  それぞれの関連性が失われていて単独で切り離されている傾向があって
  それがハウツー的思考態度とも相まって悪循環になっていませんか?


一発で目標を設定できずとも
有効な試行錯誤が確実にできる方策として
経験を積み重ねることで確実に目標設定ができるように
私はカタチの担保ができることを考えました。
詳細は、ぜひ「目標設定」をご参照いただきたいと思います。

さて、本題に入りたいと思います。
目標設定は古くて新しい課題。
私が学生の頃から「適切に目標を設定すること」が課題として挙げられていました。

評価実習に出る前に
模擬ケースが提示され、グループで目標について話し合うという。。。
そういう授業が今は多いのではないでしょうか?

  グループワークには、グループワークの良さもありますが
  未修得の事柄に関して、未修得者同士で検討させても
  習得には結びつかないと考えています。

  未修得の事柄については、
  きちんと教えられる人が責任を持って
  明確に言語化して教えるべきだと考えています。

ただし、目標設定が課題という認識は教員、実習指導者、学生ともに
共有されていたとは思いますが
じゃあ、どうしたらできるようになるのか、ということに関して
明確な言語化は為されてきませんでした。

  目標設定には、1)目標という概念の理解と、2)対象者にとっての適切さ
  という2点の課題があります。


本来であれば、どうしたら適切な目標設定ができるようになるのか
上記の2点それぞれに対して論点を整理した上で検討できればよかったのに
と思っています。

ところが、そうはならずに
教員も実習指導者も学生もみんなが困り悩んでいた
そこへ、Shared Decision Making の流れがあり、
OT協会では、MTDLP 生活行為向上マネジメントを導入するに至りました。

ここでもズレが生じたと考えています。
SDMそのものは、特にリハビリテーションの領域では必須の概念であり
MTDLPも多職種共有・言語的明確化のために最適なツールであり
導入されたという面では望ましいことではあると思います。

ただし、SDMが全てではなく
2)対象者にとっての適切さの担保の一部、下位概念であるにもかかわらず
目標設定=SDMという捉え方にすり替わってしまったのではないでしょうか。

そして
「何をしたらいいのでしょうか?」
「どうしたらいいのでしょうか?」
という悩みを抱えているOTに
「結果として達成できる状態像」と「行う治療内容」との混同を招いてしまう
という第2のズレをもたらしてしまったのではないでしょうか。

さらに
SDMに基づいて行われている、本人希望に基づいて行われている
という意識がPDCAを回しにくくしてしまうリスクや
希望を言語化できない方に対して
あるいは希望が実現困難な方に対してどう対応すべきなのか
(認知症のため過去の趣味活動を希望しても遂行困難なケースは多数遭遇します)

また
困難に遭遇した時に
対象者自身が思いもかけなかった自身の可能性を開いていく
(ジョハリの窓)
道を閉ざすことにならないか等についての検討が為されていないことについても指摘しておきます。

誤解がないように記載すると
SDMやMTDLPを否定しているわけではなく
その有用性や必要性、導入されたことの良い面は認識していますが
それらの位置付けについては、もっと整理されるべきだと考えています。

リハビリテーションという領域や
作業療法という分野において
最も重要なことは、PDCAを回していく
対象者にとっての必然に鑑みて確認していくということであり
そのためには、目標を目標というカタチで設定できる
つまり1)目標の概念理解が重要な役割を果たすのだということは強調しておきたいと思います。

関連して言えば
作業療法という分野では
それぞれがそれぞれの場で改善のための努力をしているのに
どこかでズレてしまっているということがたくさんある。
そしてそのズレは一見正当のように見えるからこそ
実は本来の課題解決から遠ざかってしまうこと
そしてその自覚が失われてしまいがちなことも記載しておきます。

 


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