
HDS-Rを施行すると、怒り出してしまう方がたくさんいます。
検査は大事ですが
検査しなくても観察から検査と同等の洞察ができれば
認知症のある方の心身の負担を減らすことができるとずっと思っていました。
そのため
HDS-Rやかなひろいテストをする一方で
日常生活や会話の質的内容や行動との照合をずっと行なってきました。
HDS-Rの項目の意義や生活場面への反映について
それなりに洞察ができるようになり
ある時から、観察だけでもかなりHDS-Rの予測がつくようになり
生活場面への反映がわかってきたので
HDS-Rの検査場面でちょっと1工夫することも始めました。
詳細は 「対応に役立つHDS-Rの工夫」 をご参照ください。
ところが、これだけ認知症の普及啓発がなされている現状でも
実際に働いている職員の中には
「リハに支障がない」「従命可=認知症じゃない」「会話が弾む」「気遣いができる」
という程度の根拠で
「認知症じゃない」「年相応の物忘れ」
などと、安易に無責任な判断をする人がまだまだ多いという現実にびっくりしています。
年相応の物忘れと判断された方のHDS-R10点でしたし
認知機能低下に言及もされなかった方のHDS-Rは5点ということもありました。
その場の会話が成り立って、礼節表現が多かったり冗談を言えたりすると
明らかに生活に影響が生じているはずなのに、認知機能低下が見落とされてしまう。。。
ご家族や生活の支援をする介護職は困っているのに
一部のリハ職はまったく気づいていないという。。。
ひとつには
認知症、認知機能低下という概念の理解ができていない職員側の問題がありますし
他方
他者に合わせようとして生きてきた方、他者に合わせるタイプの方は
生活場面で認知機能低下が目立ちにくいという傾向があります。
たとえば、困った時わからない時には誰かに尋ねて返ってきた答えの通りに対応する方や
自分から何かしようとはせず指示があるまではじっと待っている方は
生活場面では「穏やかな方」「良い方」といった判断がなされがちで
近時記憶低下があったとしても生活場面で表面化しにくいので見落とされてしまいます。
また、俗に言う地頭の良い方、元来認知機能が高かった方は
記憶が低下してもその場限りのことはできる部分が多いのでこれまた見落とされがちです。
職員がMMSEをとった場合に
(HDS-Rは標準化されていないので検査するならMMSEが良いと主張する人もいます)
MMSEはHDS-Rとは違って、検査項目が記憶だけでありません。
得点結果だけで判断してしまうと状態を見誤ります。
同じ30点満点でも、その意義、どの項目で失点してどの項目で得点したかは全く異なります。
実際に
他院でMMSEが10点代後半、疎通も良好で礼節も保持されていた方で
他院からのリハサマリーに認知機能低下への言及がまったくなかった方とお話をしていたら
1分前にした説明を忘れてしまうくらい近時記憶が低下していたので
HDS-Rをとったら10/30点だったということがありました。
遅延再生も見当識も0点でした。
そのかわり計算や語想起は満点でした。
得点結果だけで判断してはいけないのです。
HDS-RとMMSEの違いを認識した上で使い分ける
そして、失点項目と得点項目に着目し
わからない時はどんな風に対応するのか
ということを観察しておくと
日常生活で困難に遭遇した時の行動パターンが予測できて
対応方法を明確化することに役立ちます。
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