無理に広げるポジショニングからの卒業

 


ポジショニングは、まだまだ誤解が多いのが現場あるあるです。

拘縮や筋緊張が強い方に対して
拘縮変形予防のためと称して、
頑張って可動域を広げて広がったところに
無理矢理クッションを押し込むという。。。
そして、クッションを外すとぎゅーっと足や手が縮こまるという。。。
そこを見て、こんなに拘縮が強いからクッションできっちり広げないと
もっとひどくなっちゃうのよねと判断するという。。。

生活期にある方のポジショニングあるあるです。
気持ちが先走っていて逆効果になっているんです。

一生懸命頑張ってるのに効果が出ないどころか
どんどんひどくなっているのって、おかしいと思いませんか?

筋肉は多関節筋なので
無理に膝を伸ばすと
外見からは膝が伸びたように見えても
筋肉の働きとしては近位部として股関節はもっと収縮してしまいます。
だから、ちゃんとポジショニングしたのにだんだん悪くなるのです。

自分が気になるところしか見ていない
全体の中での関係を見ていない
概念の本質を理解していない
対象者のイマをネガティブなものとして捉え修正しようとする
対象者の動きと自分の介助とのやり取りをしていない
エトセトラエトセトラ。。。

私が食事介助や対応の工夫やリハで提唱していることと
まったく同じコトが違うカタチで起こっています。

良かれと思ってやってることが逆効果
過去から言われていることを検証なく続けてしまっている実践

よーく事実を見極めれば
自分たちがやってることがよくないんだ
認知症のある方の能力発揮を妨げているんだ
やり方を変えてみよう
関与の視点を変えてみよう
とならざるを得ないのに。。。

ポジショニングの体験談は山ほどありますが
足がガチガチに硬くて膝と膝がくっつきそうな方が
ポジショニング後に膝を触ると
容易に膝を左右に動かすことができるようになるのはよくあります。

早くから適切なポジショニングができれば
ご本人も職員も負担が少なく済みます。

じゃあ、どうしたら良いのか
お一人おひとり、ポイントは違いますので、お身体を見ないとなんとも言えませんが
原則は
1)常に全身を観てポジショニングを設定する
2)決して無理矢理可動域を広げるような設定はしない
3)適切なポジショニングができれば筋緊張は緩むので
  設定後に確認する

ことです。

特に
3)のポジショニングの適否について確認することが重要です。
ところが、確認しない人の方が圧倒的に多いんですよね〜。
(皮肉なことに知識と技術がない人ほど確認しないものです)
股関節や膝関節にクッションを当てた後に膝を触って左右に動かしてみる。
手指のスポンジを装着したら、肩の内外転を確認してみる。

適切にポジショニングが設定できていれば
可動域に制限はあったとしても、抵抗感なく動くようになります。

ここで、もしも、抵抗感を感じたとしたら
それはお身体のどこかに無理がかかっているという証左なんです。

無理矢理広げる→可動域が維持される  のではありません。
安楽な姿勢を作れる→筋肉がリラックスできる→可動域が維持される  のです。

ポジショニングに限らず
もしも、私が他の人より優れているところがあるとしたら
それは、常にPDCAを回している というところでしょうか。
自分の関与に自信がないから
現行の方法論を良いとは思えず説得力を感じられなかったから
確認・検証する過程を地道に踏んできました。

良いと言われていることは、全て勉強して実践してみました。
私のやり方が悪くて他者の実践を批判するのはお門違いだと思っていたので
私の理解ややり方が問題なのかもしれないと思い、何回も確認し検証し
その結果、やっぱり従来の方法論がズレていると判断しました。
じゃあ、どうしたら良いのか
試行錯誤しながら対象者の方に教えていただきました。

かつての私のように
信頼できる先達がいないという人もいるかもしれません。
そんな時には自分自身が頼りです。
ポジショニングを設定してみて、その後にお身体の状態を確認すれば
ダメ、悪くない、良い くらいの判断はできるはずです。
ダメだったらどこがダメなのか
良かったらどこが良かったのか
悪くないなら、どこが明言できないのか
自分自身の中で明確にしながら行っていけばよいのです。

ちっとも進歩していないように感じるかもしれませんが
「悪いことはしない」でいられるのも大切なことです。

良かれと思っての逆効果については冒頭で記載しました。
自覚がないと自己修正ができません。
そんな状態よりはずっとマシなんです。

自分の実践については必ず自己検証する
その蓄積で答えに辿り着けるはずなんです。
答えは必ず目の前にいる対象者の方から教えてもらえます。

どうしたら良いのかは、浮かび上がってくる
(つまり、最適解はひとつなんです)
浮かび上がってこない時には、自分の聞き方が悪いから

聞き方を変えてみましょう。
(身体が発する言葉にならない声に手を澄ませて聞きましょう)

生活期にいる方のポジショニング
どんなに重度の認知症のある方でもポジショニングとスポンジによって激変します。

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