即効性を求めて本質が疎かになる

 

 
その場ですぐに効果が現れる方法を求めて
長期的には食べ方を低下させてしまう。。。
そして、低下した食べ方だけを見て
「認知症のせい」 にしてしまう。。。

「口を開けてくれない」
「ためこんで飲み込んでくれない」
などの「問題」は食事介助あるあるですが
実際には、これらの「問題」は
結果として引き起こされているケースが圧倒的に多く
その場合には改善が可能です。


私たちが適切に介助できず
どのように食べているのかを観察できず
食べるチカラと食べる困難を洞察できないことによって
認知症のある方の「ちょっとしたウィークポイント」を「大きな問題」に
させてしまっているのです。

食事介助は、対象者の方と介助する人との文字通りの協働作業です。

私たちが適切なスプーン介助を行えなければ
認知症のある方本来の食べるチカラを発揮することが叶いません。
誤介助誤学習によって状態は悪化してしまいます。
「口を開けてくれない」「ためこんでしまう」状態になって
ようやく介助者は「問題視」するようになりますが
本当の「問題」はもっとずっと前から起こっていて
しかもそれは私たち介助者の側にあります。

時々
「忙しいんだから」「人数がいないんだから」「悠長な介助なんてできない」
と言われることも多々ありますが
実際には不適切な食事介助をしているから時間がかかるのであり
60分以上かかっても完食できなかった方が
適切な食事介助によって
食べ方も改善し
食べる時間も20分以内へと短縮されるようなケースは
よくあります。

ただし
関与したその場ですぐに効果が現れるような方法論はありません。
長い時間をかけて誤介助誤学習が起こって食べ方が低下したのですから
その時間とご介助誤学習の強さに比例して
再学習にもそれなりの時間がかかります。

口を開けてくれない方に
無理矢理歯をこじ開けるようにして開口させて食べさせれば
確かに開口はすると思いますが
そのようなあり方は果たして本当に
その方への食べる援助になっていると言えるのでしょうか?

その場では飲み込むしかないから
「食べてくれた」かもしれませんが
そのような方法論は早晩限界に行き当たります。

前よりもっと強い力で口を閉じてしまう
首を振ったりのけぞったりするなど
明らかに「嫌!」と言う意思としか思えないケースにも遭遇してきました。

意思を尊重して
無理のない範囲で食べられるように関与することで
時間はかかってももう一度食べられるようになってきます。

その方の食べるチカラに応じて援助を段階的に切り替えることで
長期的にも安定して食べ続けられるようになります。

じゃあ、それはどうするの?
と思われるかもしれませんが
誰にでも通用する魔法の方法なんてないんです。

その時その状態のその方に対して
適切な方法というのは確かに存在します。
ですが、それは目の前にいる方の食べ方を通してしかわからないものです。

その方の食べ方に答えはある

答えを見出せるように
観察・洞察しなければ。
そして観察・洞察できるように
適切なスプーン操作ができなければ。

たいていの場合に
観察・洞察も不十分だし
スプーン操作も不適切なことが多いのが現状です。
だとしたら
観察・洞察がきちんと行えれば
適切なスプーン操作ができれば
目の前の現実も変わってきます。
それは、未来への希望でもあります。

関連した記事も書きました。
「現場あるある食事介助の誤解」

食事介助については
本サイトのこちらの記事もご参照ください。
「食事介助の基本的な考え方」
「摂食・嚥下5相」
「基本のスプーンテクニックとコップ操作」
「食事介助の工夫例」

 

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