ちぎり絵の工夫(1)タオル


ちぎり絵をする時には
 こんな風にちぎった和紙を缶の中に入れておくと思います。


もちろん、私も缶の中に入れておきますが
さらに、もうひと工夫。


こんな風にタオルの上にあらかじめ和紙を1枚ずつ並べておきます。

理由は2つあります。

ひとつ目は
アルツハイマー型認知症のある方は
疾患の定義上、高齢者です。
高齢のために手指の巧緻性が低下している方は多いものです。


 このように缶の中に和紙をまとめて入れておくと
和紙の繊維同士が絡まって1枚ずつ取り出すことが難しい方もいます。

認知症のある方は、すでにたくさんの生活障害を繰り返し体験してきているので
1枚取る、こんなこともできなくなってしまった。
と認知機能低下のせいと誤認してしまいがちです。

また、セラピストも「1枚だけ取って」と指示したのに
認知症のある方が和紙を1枚だけ取ることができないと
(認知症だ)という先入観から、手指の巧緻性低下という身体面に配慮が及ばず
(こんなこともできなくなってしまった)とセラピストの側も誤認しがちです。

このような時には
タオルの上に和紙を1枚ずつ置いておくことで
スムーズに1枚ずつ手に取ることが可能となります。

決して、指示理解ができないという認知機能低下のためではなくて
手指の巧緻性低下という身体的な問題を解消することができます。

また、たとえ、HDS-R1桁と認知機能障害が重度であったとしても
色合いの変化をその都度工夫しながら和紙を貼ろうとする方も大勢います。

ちぎり絵というのは(塗り絵もですが)
同一工程の繰り返しによって作品が完成します。
構成障害が軽度であれば近時記憶障害が重度であっても
遂行可能なActivityのひとつです。

和紙をタオルの上に1枚ずつ並べて置いておけば
和紙の微妙な色合いの変化をよく見て選ぶという能力発揮を援助することができます。


こちらの作品をよく見ると
ナスの右側に限定して濃い色の和紙を貼ってあることがわかります。
ナスの左側も上は濃い色、下は薄い色と変えています。

下絵から和紙がはみ出さないように貼るだけでなくて
より立体的に貼ろうとしている
光と影を表現しようと貼ろうとしている
色合いの変化を意識して貼っていることが伝わってきます。

このように
ちぎり絵というActivityで工夫をする
ということは、メタ能力として表現に工夫をしているということですから
普段の他者との関係性においても表出を工夫している可能性があります。

まさしく、この作品を作った方は
私に対しても、とても配慮してくださった方でした。

水分補給のために飲み物をお渡しすると
口をつけたコップの反対側の示して
「先生、こっちは口つけてないからここから飲んでくださいよ」
と勧めてくださったりします。

自分だけが飲んでは私に悪いと思ったのでしょう。
お元気であればきっと私の分の飲み物を用意してくださる方なんだと思います。
でも、今の自分にはそこまでできない。
今の自分にできる精一杯のことは、飲み物を分けることだと思ったのでしょう。
ただ、結果として不適切な方法 (^^; になってはしまいましたが
他者への思いやり、心配りという能力と特性の発露からのものに違いはありません。

このような方は、
他者へ配慮する能力がある故に
他者との関わりの中でストレスを抱えることもあります。
特に周囲に同じように配慮できる他者が少ないような環境
つまり、この方だけが一方的に配慮するような環境では
気疲れしてしまったり、安心して過ごすことができなかったりします。

Activityの場面設定の工夫をすることで
認知症のある方の能力を
私たちが知ることができたり、
再確認できたり、
合理的な能力発揮の援助を促すことができますし
Activityというのは、単に「できることをする」「時間を過ごす」ために
提供するものでもありません。
 
Activityへの向き合い方にその方の能力も特性も困難も反映されていますから
ふだんの暮らしぶりとも密接な関係があります。
そこを踏まえることで、観察や対応に活かし、実践を深めるきっかけにもなりますし
また、逆も言えます。

和紙が缶の中に入った状態のままで提供するだけでは
「和紙を1枚ずつ取り出す」ことができないというリスクを減らすことができず
本来できるはずの「和紙を1枚ずつつまみ上げる」という能力発揮を促せず
(認知症だから和紙を1枚ずつ取り出すこともできない)と誤認してしまう恐れすらあります。

本当は、こんなにも、色合いの微妙な変化を工夫し、楽しむことができる方なのに

同じ方でも、
場面設定次第で、能力を発揮できることもあればできなくもなる。

能力は状況によりけり発揮される。

場面設定の工夫というのは、奥が深いものです。

(続く)

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