
前の記事で
車椅子座位で身体が傾いてしまう方に対して
臥床時のポジショニングをすることで座位姿勢が改善されるケースがあることに言及しました。
臨床の現場では
車椅子で身体が横に傾いている方に対して
1)傾いている側にクッションを当てる
2)車椅子の座面を調整する
対応をされることが多いようです。
大切なことは、なぜ傾いている側にクッションを当てると良いのか?
なぜ、車椅子の座面を調整すると良いのか?
その前後で対象者の身体に何が起こっているのかを理解した上で対応する。
ということだと思っていますが、
多くの場合にそれらについての言及はなく、
単にハウツー的にそうするものだと先輩から教えられ
そうした結果の身体の違いを確認することもないのが現実ではないでしょうか。
褥瘡予防と言って
不必要に過剰に下肢を伸展させ踵部を浮かせてしまうと下肢の屈曲拘縮を増悪させてしまいます。
大腿四頭筋や縫工筋は2関節筋ですから
筋緊張を緩和させることなく、遠位の膝を過剰に伸展させたり股関節の外転を行えば
近位の股関節周囲の筋は短縮するしかありません。
クッションを当てている間は膝が伸びているように見えて
クッションを外した途端、ギュンと一気に膝が曲がったり
股関節が内転・内旋してしまうことも現場あるあるです。
その場面を切り取って
「やっぱりクッションを当てないとこうなっちゃうのよね」と思われていますが、
現実には起こっていることは全くその反対のことなのです。
クッションが膝の伸展や股関節の外転を援助しているのであれば
クッションを外してもしばらくはその肢位を保持できているはずです。
ところが、実際にはそうではなくて
クッションを外すと逆方向に力が働いてしまうというのは
クッションを外さなくても逆方向に力が入っていて
クッションはその力を止めるだけの作用しかしていなかった。。。
良かれと思っての不適切な対応、過剰に膝を伸展させたり股関節を外転外旋させる対応が
逆効果となって筋緊張を亢進させ、拘縮を増悪させているのです。
なぜ
「ちゃんとクッションを当てているのによくなるどころか悪くなっているのか?」
疑問に思わないのでしょうか?
ちゃんとした対応をすれば悪くなることはないはずです。
悪くなるとしたら、
見立てのもとに行った対応が悪かったのか、
それとも見立てそのものが悪かったのか、
そのいずれか
ということを検討する必要があるのではありませんか?
さてさて、話を元に戻します。
生活期において、
車椅子座位で身体が横に傾いてしまう方で圧倒的に多いのが、骨盤周囲筋の硬さです。
その場合、臥床している時にも骨盤周囲筋は硬く、
往々にして骨盤がどちらかに傾いているものです。

このような骨盤の傾きに対処せずに、
膝を伸展させようとクッションを当ててしまいがちですが
最初にすべきことは骨盤の対称性の担保です。
まず、写真では骨盤が左へ傾いていますから左右対称になるように
骨盤の左側の下に折りたたんだタオルを設置します。
筋肉の働きをタオルで代償させるのです。
臥床レベルでも姿勢保持するために筋肉は働いていますから
筋肉の働きを代償するように、身体とベッドの隙間を埋めるようにクッションを設置します。


姿勢保持のために過剰に働いていた筋肉を休ませることができれば
身体はリラックスしますから、
結果としてリラックスした状態
(骨盤周囲筋の左右差のある筋緊張が緩和される)で
車椅子に座ることができるようになります。
だから、結果として車椅子の座位姿勢が改善されるのです。
リハやケアの分野では
良かれと思って、
でも結果としては過剰筋緊張を生むようなポジショニングをしていることが散見されます。
そこを改めれば良いだけなのです。
筋肉はゴムのように伸び縮みをするものです。
縮みっぱなしでは筋肉は有効に働けません。
車椅子座位で骨盤よりも上の、体幹や上肢の動きに合わせて骨盤内での重心移動が起こります。
その重心移動に応じて骨盤が無理なく動くことで骨盤上位の姿勢を保つことができる。
筋肉の柔らかさを保つことが大切なのです。
そして、ポジショニングを設定したら必ず確認をすることが重要です。
必要に応じて動けるように身体の柔らかさを担保することが目的ですから
設定した後に身体が柔らかくなったかどうかを確認します。
適切なポジショニングを設定できれば、その効果はすぐに現れます。
仰臥位でも側臥位でも膝を軽く左右に動かして抵抗感なく動くかどうかを確認します。
もしここで抵抗感を感じるようであれば、設定のどこかに問題があるという意味です。
ベッドの足元から、ベッドの横から全身のアライメントを確認し直して
見落としている部分があるのかどうか、設置したクッションが過剰だったのかどうかを見直します。
抵抗感なく膝を動かすことができれば、リラックスできている証左となります。
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