
「症状や障害を好き嫌いと誤認する」
認知症のある方への対応で現場あるあるのパターンです。
認知症のある方の意向尊重という名目のもとに行われているとしたら
本当に怖いことだと思います。
例えば。。。
昼夜逆転やせん妄予防のために
日中過ごす場所を明るくしておくのは今やケアの常識となっています。
ところが、人によっては
部屋の照明をつけておくことを拒否する場合もあります。
この言葉を表面的に受け取って照明を消してしまうと
後になって昼夜逆転やせん妄を起こしたりします。
ここでは説明をすることが必要です。
説明をする時には
目の前にいる方が電気をつけることの何を嫌だと感じているのか
電気をつけることで目の前にいる方にどんなメリットがあるのか
例えば
「足元が暗いと危ないので明かりをつけさせてください」
「健康のために日中は明るくして過ごすと良いそうですよ」
「電気代は施設持ちなのでつけておいても〇〇さんの個人負担にはなりませんよ」
などなど、その方のポイントに沿って説明をすると
「あぁそうなの。それじゃお願いしますね。ありがとう。」
と言われることが圧倒的に多いものです。
ただし、近時記憶障害があれば
その場では説明の理解ができて対応の受け入れを了承してもらえても
数分後には忘れてしまって「明かりを消して」という訴えを繰り返すことがあります。
ここだけを切り取って
「明かりを消してほしい」という訴えを頻回に繰り返す
→よっぽど明かりがついているのが嫌だから同じ訴えを繰り返す→明かりを消してあげよう
という判断をする人がいます。
つまり、近時記憶障害を好き嫌いと誤認しているわけです。
ところが
意思尊重という考え方を表面的にしか理解していないと
「認知症のある方が嫌がっているから部屋の明かりを消しておいた」
という対応をするようになってしまいます。
近時記憶障害なのか?好き嫌いなのか?
その判断のポイントは、他の場面でも忘れてしまうことがあるかどうか。です。
つまり、日常生活場面での言動をどれだけ観察できているのかが問われます。
近時記憶障害がなくて本当にその方の意思表示として嫌がっているのかどうか
きちんと日頃から観察できていれば区別がつくものです。
きちんと説明をせずに
その場の言葉だけを切り取って
認知症のある方の言葉通りに日中から暗いお部屋で過ごしていて
せん妄を起こしてしまった方には複数遭遇したことがあります。。。
昼夜逆転の場合でも
大声を出したりセンサー鳴動が活発になるなど
職員との関係性で職員が困るような「問題」が発生すると気がつかれやすいものですが
大声も出すことなくセンサー鳴動もなく、ただ静かに起きているだけだったりすると
気がつかれにくいものです。
せん妄も過活動型せん妄であれば気がつきやすいけれど
低活動型せん妄には気がつきにくいものです。
そうすると、活気がない、食欲がない、ぼーっとしている
などの体調変化があっても気づかれにくく対応が後手に回ってしまいます。
意味不明なことを言ったり
ベッドから落っこちてしまったり
食事摂取量が減ったり
常にぼんやりしていたり
そのような方でも日光浴を奨励し日中居室の明かりをつけておくだけで
過活動型せん妄も低活動型せん妄も解消したケース
昼夜逆転を解消し日中の覚醒を改善したケースを何例も経験しています。
きっとこちらにお立ち寄りくださっている人なら同様の経験を多数されていることと思います。
認知症のある方が
経過や周囲の状況を参照できずに
その場の感情だけで発した言葉を言質にとって「意思表示」と受け取るのはどうかと思っています。
きちんと説明して理解した上で尚且つ表明された言葉であれば
「意思表示」として尊重すべきだと思いますが、
近時記憶障害があると経過や周囲の状況を忘れてしまっているので
説明されて初めて理解できるようになることは多々ありますし
理解できれば表明された意思表示も変わります。
また、理解できても忘れてしまって同じ訴えを繰り返すことがあるのだから
その都度説明を繰り返すという対応が必要だと考えています。
さらに言うと、問題は
「電気消して」と言われた時に
その方が電気がついていることの「何が嫌」なのかを汲み取れない
あるいは尋ね返すことができなかったり
その表明に沿って、電気をつけることのメリットを
その方の理解力や特性に沿って臨機応変に説明できない
電気をつけることの意義を実は理解できていない
といったように、本当の問題は、こちら側職員側にあるのではないでしょうか?
表面的に意思尊重しているように見えて
その実、本当のコミュニケーション、やりとりが為されていない
ということになりはしないでしょうか?
そして、その裏には
いざこざを回避しようとするために
言いなりになることを無意識に選択しているという心理が隠されてはいないでしょうか?
認知症のある方の意思尊重・意向尊重は当然最優先されるべきことではありますが
近時記憶障害と誤認されて良いことではありませんし
近時記憶障害の特徴を踏まえて必要な説明をすることが
認知症のある方の本当の意思尊重につながると考えています。
もっと言うと、尊重と迎合は違うと常々考えていますが
現場ではまだまだ混同されているのだと感じてもいます。
この尊重と迎合は違うということについては
別の記事で書いていこうと思います。
2026年4月発売
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