体験送り@ケア

ポジショニングや食事介助は
適切に行えれば効果がその場で出ることはもちろんですが
次の機会にも良い影響を与えるものです。

例えば
ポジショニングを朝適切に設定できれば
次に体位変換をする時にも身体はリラックスしていて
スムーズにポジショニングが設定できます。

逆に
ポジショニングを適切に設定できなければ
次に体位返還をする時に身体の筋緊張が亢進したままなので
余分な力を必要としたり
上手く設定できなくて修正も大変で時間がかかってしまいます。

食事介助や口腔ケアにおいても
適切な介助ができれば
対象者の持っている能力が発揮されるので
対象者も食べやすくなり
介助者も負担が減って楽になります。

その能力発揮は次の介助場面でも発揮されるので
どんどんと楽になっていくものです。
ポジティブな体験送りを認知症のある方とスタッフの協働で行えるようになります。

逆に言えば
無理矢理食べさせたり、歯ブラシを口の中に入れたりするような
介助者の行為は、その場では仕方ないと言う人もいるかもしれませんが
感情記憶は蓄積していきますし
重度の認知症のある方でも再認できる方は大勢います。
(たとえ、言語表現力が限定していて言葉にしなくても
 感受している可能性は大いにあります。)
歯ブラシを口の中に入れるという特定の場面で
前回の苦痛な感情を伴う体験を再認できるからこそ拒否する
という方もいるのです。
この局面だけを切り取って、拒否するのは認知症で理解できないから仕方ない
拒否しても口腔ケアはせねばならないと考えて無理矢理口腔ケアをしていては
いつまで経っても口腔ケアに協力してもらえないどころか
ますます悪循環になって口を開けてくれなくなったり、
口腔ケアをしようとするスタッフの指を噛んでしまうことすら起こりえます。

ネガティブな体験送りをスタッフがしてしまっているのです。

その方それぞれに苦痛でない方法、受け入れやすい口腔ケアの模索を考えるべきです。

  「わかっちゃいるけど、時間がないからできないのよ」
  と言う人は時間があってもできない人です。
  その場の3分を惜しんで長期的に10分の時間を所用することに
  なっていることがわからずに「大変」「忙しい」と言う人です。
  適切なポジショニングを実現できて、
  その意義も実感できている人はきちんと実行しないではいられません。
  適切なポジショニングをできれば設定に必要な時間は短縮されます。
  どんどん短縮されるものなのです。
  食事介助でも口腔ケアでもまったく同じコトが違うカタチで起こっています。

「ちゃんと介助したいけど時間がないから難しいのよね」
と言う人は、本当は発言した人自身が時間の有無に関わらず
「私はちゃんとした介助ができないんです」と公言しているも同然なのです。

そのような人は
自身の不適切な介助への自覚がなく、自覚がないから自己修正もできないので
次の人にマイナスの体験を送ってしまうことになります。

対象者と次の人が大変な思いをしながら
もう一度食べる再学習を促すことができれば
プラスの良循環が起こります。
つまり適切な介助ができない人のツケを
対象者と適切に介助できる人が払わされるという構図になっているのです。

食事介助もポジショニングも生活期の初期にはさほど目立ちません。
対象者自身のレジリエンスが高いからです。
軽度の方が短期的に利用する施設ではなく
特養(介護老人福祉施設)や長期入院・入所が可能な施設において
当初はそうでもなかったのにレジリエンスの低下とともに表面化してくることがわかると思います。

逆に言えば
「そんな人はいないから関係ないもん!」ではなくて
予防的に適切な対応ができるようにきちんと申し送りができることが大切です。
きちんと申し送る。。。というのは再現性を担保できる
ということです。

つまり、自分自身で常に適切に対応できるからこそ
ポイントが把握できていて
なおかつ、他職員が対応し損ねてしまいがちなポイントも把握できている
そこを明確に言語化したり視覚化することができる
ということを意味しています。

  

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