スプーン操作を見直すべき兆候をまとめました。
もしも、対象者の方が下記のような食べ方をしていたら
介助者側の不適切なスプーン操作の結果ですから
ぜひ、ご自身のスプーン操作を見直していただきたいと思います。
・・・ スプーン操作を見直すべき兆候 ・・・・・・・・・・・
・
・
・ <開口した時>
・ ・舌が奥に引っ込んでいる
・ ・舌が硬くなっている
・
・
・ <食塊をとりこむ時>
・ ・顎が上がっている
・ ・上唇を丸めずに閉じている
・ ・口角から食塊がこぼれ落ちる
・ ・引き抜いたスプーンに食塊が残っている
・ ・正面ではなく介助者の側に頭部を回旋している
・
・
・ <食塊が口腔内にある時>
・ ・咀嚼・送り込みに時間がかかる
・
・
・ <食塊を嚥下する時>
・ ・喉頭が完全挙上しない
・ ・喉頭が複数回挙上する
・
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詳細は こちら で説明してありますのでご参照ください。
上記のような食べ方をしていないということを
最低限、担保して初めて、その上で
適切な食べ方を援助することが叶います。
現実には
卒前卒後を問わず、してはいけないスプーン操作について
そしてその理由についてもきちんと教えてもらっていないがために
美味しく食べていただきたいと願いながらも
結果として不適切なスプーン操作をしてしまい
対象者が食べづらそうにしていると漠然と思っても
どこがどうなっているのか、なぜそう感じたのかを言葉にできず修正もできず
悶々とした日々を送っている人も多いのではないでしょうか?
舌が後方へ引っ込んだり、板のように硬くなってしまうのは
介助者がスプーンを口の奥の方に突っ込んだり
上の歯や歯茎で食塊をこそげ落としたり
口の中に食塊を入れてしまうような
スプーン操作を行うことで引き起こされます。
ところが、食事介助の現場では
ムセの有無や大小は気にしても
自身の介助方法を気にする人は少数派です。
教えてもらっていないがために
不適切なスプーン操作をしていても自覚することができません。
生活期にある方は、食べにくいと感じても
その食べにくい介助に適応しなければなりません。
一日3回の食事+午前午後の水分補給と
不適切な誤った介助方法であったとしても適応するしかないのです。
舌が板のように硬くなっている方でも
前舌をしっかりと押してあげる操作を
食事介助の場面で毎回毎回繰り返し行うことで
しなやかさを取り戻すことができます。
前舌をしっかり押すと
作用反作用の法則で、押された反作用として舌尖の跳ね返りが起こります。
板状となってしまった舌にもう一度「動きの再学習」を伝えるのです。
喉頭挙上のタイミングが良い方で完全挙上ができる方であれば
自分自身のペースで摂取できるように
ストローで飲み物を摂取していただくと
綺麗に送り込みができて、ムセもなく喉頭完全挙上しながら
飲める場面を目にすることができるでしょう。
介助が必要であれば
口腔期の負担を減らせるように
ツルンとしたテクスチャーのゼリーなどを少量提供すると
スムーズに送りこめて、喉頭も完全挙上できる場面を目にすることができるでしょう。
このあたりの判断は
その方の口腔期と咽頭期の能力と困難の兼ね合いとなるので
一概にどうすべきかは言えません。
目の前にいる方の食べ方をきちんと観察し
食べ方に反映されている能力と困難を洞察すれば
適切な食形態と介助方法が自然と浮かび上がってくるものなのです。
咽頭期の問題、例えば
喉頭挙上のタイミングのズレ、遅延、挙上の可動域の少なさ
が咽頭期本来の問題のことは実は非常に少ないのです。
この辺り、現行の摂食・嚥下の知見が嚥下反射に囚われすぎていると思います。
おそらく、もともとはCVA後遺症をベースに知見が蓄積されてことに
関係していると思っています。
喉頭が不完全挙上しかできない方でも
適切なスプーン操作を繰り返すことで完全挙上できるようになったり
バラバラのタイミングで複数回挙上してようやく完全嚥下していた方の
タイミングが整ってきて〇〇秒ごとに〇〇回の挙上が起こって完全嚥下
と明確化できるようになったりします。
この時に大切なことは
相手の食べ方を尊重して、決して修正しようなどとはせずに
(相手の食べ方は今までの介助方法に対する誤学習なので
誤介助にすら適応してきたという家庭を尊重します)
まずこちらの介助を適正化して反応の変化を待ちます。
適正化できるということは
冒頭に記載したような食べ方を引き起こさないことを最低限担保したうえで
その方固有の食べ方に合致させた介助ができるということです。
多くの場合に、食事介助をカンタンに考え過ぎなんです。
自分の介助に根拠不明な自信がある(苦笑)から介助したがる(苦笑)
「私の介助が下手なせいで食べにくい思いをさせたらどうしよう」
ともっと不安に思ってほしいと思います。
安易な介助をする人の行動を修正することは難しいので
的確に介助できる人を増やしていく
話を聞いてくれる人を増やしていく方が結局は
自分も疲弊することなく
誰も傷つけることなく効果的だと考えています。
(直属の上司の協力があっても難しいので
上司の協力が得られなければまず無理です。
逆にこちらが悪者にされてしまいます。
自己防衛のために否認・攻撃をする人もいるからです。
悪者にされても行動を修正してくれれば良いのですが
それは非常に難しい。。。)
「多職種連携の現実的課題」という記事や
「連携について 1〜9」というシリーズ記事を書きましたので
興味のある方はご参照ください。
自力摂取を頑張っていただく方針をとることもあります。
若年発症するアルツハイマー病や前頭側頭型認知症のある方や
アルツハイマー型の方でも元来ご自身の意思が明確なきっぱりした方
しっかりした方などの場合には自力摂取を目指したほうが
混乱なく誤嚥性肺炎の再発もなくもう一度食べられるようになる
ケースが圧倒的に多いです。
もちろん、自力摂取を目指すにしても細かな段階づけは必須です。
ためこみや吐き出し、ムセなどの食べることの問題が生じた時に
ちゃんと観察もせずに、自身の介助を振り返ることもせずに、まず介助する
介助してうまくいかないことを体験して初めて
「どうしたらいいんだろう?」と考える。。。
そりゃーうまくいくわけないじゃん!
逆に言えば、ここに未来への希望があります。
ちゃんと観察する
自身の介助の適・非適を振り返ることができれば
今まで見えなかったもう一つの現実を目にすることができます。
「何がいいんだろう?」「どうしたらいいんだろう?」
と考えなくてはならないとしたら
それはまだ観察・洞察が不足しているということを示しているので
もう一度観察に立ち返れば良いのです。
というか、観察に立ち返るしかないのです。
側臥位での食事介助も提唱されていますが
確かに側臥位は、舌の送り込みに関しても喉頭挙上に関しても
除重力位となるので負担を減らすことができますから
その面では効果的だと言えますが
介助における誤学習誤介助の側面を解決できなければ片手落ちとなりかねません。
介助方法を変えることによってもう一度安全に食べられるようになりますが
本来のその方の能力発揮を促しているので当たり前のことです。
適切に対処できれば、舌が硬くなることもないのに
適切に対応できないために、舌が硬くなり結果として喉頭の動きが悪くなり
低栄養や脱水を回避するために必死になって
介助者が口の中に飲食物を「入れよう」とした結果
喉頭不完全挙上やタイミングのズレによって誤嚥性肺炎のリスクは甚大になります。
善意に基づく行動であったとしても
知識と技術の伴わない行動によって真逆の事態を引き起こしてしまいかねません。
ムセの有無しか確認しない食事介助というのは本当に恐ろしいものなのです。
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