スプーンの工夫をする時に気をつけること

認知症のある方に
スプーンを工夫することもよくあります。

そこで気をつけないといけないことは
認知症のある方の場合に
今まで不適切なスプーンを使っていた場合でも
不適切なスプーンに慣れがあるために
スプーンを変えることに抵抗感が生じやすいということなんです。

スプーンを把持しながら操作することが難しくて
1回の食事中に何度もスプーンを落としていたケースに対して
工夫した新しいスプーンを提供したところ
明らかに把持・操作の状況も改善し、スプーンを落とすこともなくなったにもかかわらず
「このスプーンは使いにくくて嫌。前のスプーンの方が良い。」
と言われたことがあります。

私としては
前のスプーンのどこが扱いにくいのか
どうしたら扱いやすくなるのか明確化してわかった上で提供したので
「これは慣れの問題だから時間が解決してくれる」
むしろ不適切なスプーンにさえも適応しようとしてきた習慣が
新しいスプーンを拒否させているので
その都度、事実をもとに説明し、新しいスプーンに慣れるまでは励ますしかないと考えていました。
もちろんそのあたりも記録には残しているのですが
対象者の気持ちを大切に考える職員が
「〇〇さんがこう言ってるんですけど」
と言ってくることがあります。

このようなケースは案外多いもので
認知症のある方にこう言ったことはよくあるということを知っていることが必要です。

不適切なスプーン操作に対してさえ
適応しようとして自らの食べ方を低下させてしまうのと
まったく同じコトが違うカタチで起こっているのです。

このような場合には
事実をもとに説明することが必要です。

事実を観察する時には
時間経過という縦軸とともに
関連事象という横軸も含めて総合的に観察することが必要ですが
今のことだけ切り取って限局的に考えるタイプの人もいるので
「前のスプーンを使っていた時には〇〇だった。でも今はそれはない。」
というように以前の状態と今の状態を比較しながら説明することが有効です。
そして、食べ方の改善という事実を目の当たりにすれば職員も納得してくれます。

慣れるには時間が必要です。
手指だけでなく上肢全体の使い方を変えることを求められるからです。

例えて言うならば
私たちが家電製品を新しく買い替えると
今まで使ったことのないような機能を目の当たりにして戸惑うけれど
使い慣れれば便利に感じるのと同じような意味合いがあります。

そういう感覚を踏まえた上で
対応する必要があるのだと感じています。

もちろん
提供する私たちの側に
「数打てば当たる」式に、
こういうスプーンを見かけたらから使ってみたら?と言う思いつきではなくて
なぜ前のスプーンが扱いにくかったのか、なぜこのスプーンが良いと考えるのか
明確に言語化できて提供しているのだということは大前提となっています。

食べ方の評価が大事なんです。

どのように手指でスプーンを把持して
それは、どのような必然のもとに行われているのか
どのような筋肉の働きによるものなのか
と言うことが明確化できていること

単に
スプーンの柄、持ち手を太くすれば良いわけではありません。
スプーンの角度を変えれば良いわけではありません。

一人ひとりに必然があります。

その上でのスプーンの工夫であれば
必ずスプーンの扱い方、食べ方は良くなりますし
時間の経過で慣れれば、対象者の不満の言葉も聞かれなくなってきます。

慣れるまでの間は
「今は変な感じがするかもしれませんが、だんだん慣れて食べやすくなってきます。
 前のスプーンは〇〇ということがあったけど、このスプーンではそういうことがないでしょう?
 もう少ししたら慣れるからそれまで頑張って使ってみてください」
と励ましていただきたいものです。

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