答えは目の前の事実にある


リハやケアの分野で常識とされていても逆効果となっていることって
実はたくさんあります。

たとえば
立ち上がりの介助をするに際して
身体を前傾させ足で踏ん張って床反力を使って立ち上がる
というものですが
実は、事実を確認すれば、立ち上がれるはずがない
立ち上がるためには腰を痛めてしまう
ということが起こっています。

今回はテーマが異なりますので
詳細は記載しませんが、興味のある方は_立ち上がり_をご参照ください。

ここでは
なぜ、そのことに私が気がついたか、ということを記載していきます。

上記の立ち上がり方を研修で学んだ若き日の私はその通りに実践していました。
でもだんだん違和感が募ってきます。
立ち上がりに改善が見られないどころか、
だんだんと立ち上がれなくなる、介助量が増える方が続出したのです。
同時に、どうして片麻痺の方に腰痛のある方がこんなに多いのだろうとも疑問に思っていました。
  
もしかして立ち上がり方の練習方法がどこかおかしいのではないかと思い始めました。
でも当時私の周囲にいる人に相談してもまともな返事が返ってこないだろうなとも思っていたので
自分で考えることにしました。
そしてやはり上記の立ち上がり方を指導していては、効果がないどころか逆効果になる
ということがわかりました。


床半力を利用するために足底で踏ん張っても
写真を見ればおわかりいただけるように重心の位置は黄色い線よりも後方にありますから
臀部を浮かせて立ち上がることはできずに後にひっくり返ってしまいます。

臀部を浮かせて立ち上がるためには
腰背部を過剰に収縮させる必要があります。

頑張って強く踏ん張れば踏ん張るほど
大きな床半力が働き
臀部を浮かせるためにいっそう腰背部に過剰な収縮を生じさせる必要があります。
だから、頑張れば頑張るほど立ち上がりの練習をすればするほど
腰痛になるんじゃないかと思いました。

高齢者でよく見かけるのが
立ち上がった時に股関節も膝関節も屈曲位になってしまって
抗重力伸展活動ができなくなっている方。
たくさんいますよね?
その姿を見て、人は「筋力低下」と言いますが
腰背部の過剰な収縮という立ち上がり時の誤用によるものと考えています。
腰背部を触ってみてください。
筋肉ガチガチですから。
「立ち上がり100回」なんて、とんでもないです。

じゃあどうしたら誤用を生じさせずに立ち上がれるのか
どうしたら善いのか
対象者の方の立ち上がりの改善方法を考え始めました。
その結果、効果的な立ち上がり方を見出し、
実際に対象者の方に確実に効果を出せるようになりました。
その結果をまとめて、2009年に開催された第12回神奈川県作業療法学会のワークショップで発表しました。
(それ以前から県西地区の勉強会では発表していました)

現行の方法論で良しとされている対応で
理屈で考えてみればおかしなことってたくさんあります。
多くの人は、「良しとされていること」「やるべきとされていること」をしますが
「本当に良かったのか」という確認と
「どこがどう良かったのか」という一般化・抽象化
をしないのです。

だから、現実には不都合が生じていても気がつくことができないし
不都合が生じていることに気がついても
自身の対応の悪さではなく対象者の状態像のせいにしてしまうのです。

私は幼少期に算盤を習っていました。
現在のスイミングや英会話のように、当時は算盤を習うことが流行っていたのです。
そこで繰り返し言われたことが「検算をする」ことです。
自分の計算が正しかったかどうか、確認するということを
当時はその意味も本当にはわかっていませんでしたが、身体に覚え込まされました。
今では「検算する」ことを体得できていて本当に良かったと思っています。

たとえ、100人のうち99人に有効な方法でも
目の前の1人に有効かどうかは、やってみなくてはわからない。
確認しなくてはいけないのです。

残念なことですが
そして、皮肉なことですが
リハやケアの知見が蓄積されてきたからこそ
目の前の対象者の状態像を把握せずに
単なるハウツーの当てはめをする考え方が蔓延しています。

目の前の対象者の状態像を把握するためには、知識が必要です。
概念の本質を理解しなければ、状態像を把握する
目の前の事実を観察し、対象者に何が起こっているのか洞察することが叶いません。

この過程は、一夕一丁にできることではありません。
個々の人が長いキャリアの中で蓄積していくものです。
でも、その努力をする人って少ないんですよね。。。
最新の論文や理論を読んだり学ぶ人はいても、地道な自己検証にエネルギーを注がない。。。

OTの世界で「科学的」であることを自他ともに要請された時に
道を誤ったのだと考えています。
観察は非科学的であるから他の機械や臓器と同様に科学的とされる数での検証に歩を進めた。
でも、OTの対象は「人」なんです。
人文科学の新たな地平を切り開くのは
「人」に対して新たな科学の可能性を提示することではないでしょうか。

人の視覚・聴覚・皮膚感覚や運動覚などの感覚は
磨くことが可能で習熟も可能なことは日本の伝統工芸の職人の技の凄さが証明しています。

観察や洞察が非科学的なのではなく
非科学的な観察や洞察しかできないことが問題なのです。
人文科学としてのOTは観察や洞察を科学的に高めることができるはずです。

「科学は嘘をつかない」  (服藤恵三)
「科学は過去の知識の修正の上に成り立つ学問」

今の常識が将来にわたって常識であるとは限りません。
これから先、人類の叡智でどんな地平が築かれるのか今は誰も知らないのです。

多くの先人によって
科学は幾多の分野で目覚ましい発展をしてきました。
歴史に名を残す天才の存在によるものだけでなく
市井の人々の地道な実践が人知れずその発展を支えてきたのだと思います。
日々目の前にいる人たちの健やかな日々のための実践がそれらを支えてきたのだと思います。

目の前の事実に答えはある。
答えを聴くためには正しく問うことが必要です。

「書かれた医学は過去の医学である。
 目前に悩む患者の中に
 明日の医学の教科書の中身がある」
   ( 沖中重雄 )

「情報化社会と教師の仕事」を読んで


臨床大会での講演をきっかけに
教育工学の沼野一男先生の著書を久しぶりに読み直しました。
初版の刊行が1986年ですから40年近く前の本ですが
内容は全く古びていません。

ティーチングマシンが導入されて
個々の子どもの習熟度に合わせたプログラミングが為されるとなると
人間である教師ができること、すべきことは何か?
という問いが為されます。
まさに、教育とは何か?教師の仕事とは何か?
ということを否が応でも突きつけられるのです。

ティーチングマシン導入以前は
教授目標の妥当性については内容に関する議論・検討が主だったが
導入以降は目標の明確性が議論・検討されるようになってきたとのこと。

リハの世界では、目標の、内容の妥当性について提唱・議論されていますが
教育界では既に数十年も前に経験済みの事象だったんだ。
まさしく、私が目標設定において従来から提唱しているカタチの重要性について、
教育界でのお墨付きをもらったような気持ちになりました。

  目標の内容の妥当性を提唱・議論する人たちは
  「目標とは何ぞや」という概念が理解できていない現状について
  認識できていない人たちが多いと感じています。
  目標とは何であって何でないのか、
  明確に言語化できる人の本当に少ないことを認識できるためには
  目標の概念理解ができることが必須という、皮肉な現実があります。
  目標の内容の妥当性の吟味検討ができるためには
  最低限、目標を目的や方針や治療内容ではなくて
  目標を目標というカタチで設定できて初めて
  内容の妥当性を検討できる土俵に乗ることが可能となります。
  大多数のセラピストは、目標を目標というカタチで設定できていないのに
  内容の妥当性の吟味検討提案をするという、意味のないことをしているのです。

この本の真髄は
後半の「問う」授業の展開にあります。

まさに、ソクラテスの意図を見事に具現化していたのでしょう。
著者の凄みを感じました。

「問う」授業を展開するためには
教師にも学生にも準備とエネルギーを要求されます。

考えてみれば、本質的なことを実践するために
事前の準備が必要なのは言うまでもないことです。

最先端の論文を読んだり
海外の理論を学び実践することも悪いことではありませんが
本質に触れる経験がないと上滑りするんですよねぇ。。。

私たちセラピストも
長年の蓄積がある教育界から学ぶことって多々あると思います。

表面的なことに流されるのではなくて
本質に触れる・向き合う機会が必要なんだということを深く感じました。


さてさて
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。

今年が皆様にとって
ますます善い年でありますように。。。

既存の常識とは相容れないような提案がなされた時に
否定され提唱者が迫害を受けるのは枚挙にいとまがありません。
古くはガリレオ、ゼンメルワイス、小笠原登。。。
同時に後世になって彼らの正当性が認められたこともまた歴史が証明しています。
勇気を持ってファーストペンギンの立場に立った彼らは素晴らしいと思いますが
同時に彼らの周囲で実践をし続け、継承し続けた名もなき人たちがいたからこそ
彼らの正当性が後世になって認められたのだとも思っています。

「科学は嘘をつかない。科学は多数決ではない」
「科学は過去の修正の上に成り立つ学問」

この言葉を胸に
今年も実践を続け、志ある人たちの勇気を支えられるようなサイトを目指していきます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


  


グループワークの功罪


昨今、どんな研修会でもグループワークが組み込まれることが増えてきました。

グループワークには、グループワークの良さがあります。
多様な考え方に触れたり、他者の考えや実践に触発されたり
あるいは、悩んでいるのは自分だけではないと実感できたり
他の人の解決策から学んだりすることもできます。

一方で、実はあまり認識されていないデメリットもあります。
認知症のある方への対応で、困った時には解決策を他人に聞く
どうしたら良いのかを考える
という、誤ったメタ認識を学んでしまう
ということです。

職種によらず、本当に多いと感じているのは
認知症のある方の言動を『きちんと』観察し、情報収集をせずに
「〇〇という時には△△する」というパターンを押し付けたり
表情や口調などの観察を怠り、「⬜︎⬜︎してみたら」という推測から
対応の工夫を考えようとするという在り方です。

本当に有効な対応は、考えるのではなく、自然に浮かび上がってくるものです。

自然に浮かび上がってこない時には
情報収集が足りないのです。
多くの場合に、ポイントほど見落としているものです。

基礎知識を習得していなかったり
学んだことはあっても忘れていたり
言葉を知っていても概念の本質を理解していないから
観察できない、ということは枚挙にいとまがありません。

グループワークが有効な学びになる場合と
然るべき人がきちんと知識と技術を提供した方が有効な学びになる場合があります。

とりわけ
初心者に対して
きちんと知識を提供することをせずに
「認知症の人の気持ちを話し合いましょう」
なんていうことは百害あって一利なしです。

救命救急の初心者向けの講習会で
道に倒れている人にどうするか、みんなで考えましょう
なんて講習会をするわけがありません。
知らないから、知りたくて講習を受けに来ているのですから
きちんと教えてもらわなければ困ります。

認知症のある方が何に困っているのか、どうしたいのか
認知症のある方の気持ちは尋ねてみないとわかりません。
ただし、尋ね方には工夫が必要です。
その工夫を知識として伝達すべき
であって
勝手に、憶測で、考えさせたり話し合わせることがどうして適切なのか、私には分かりません。

どの職種でも
ある程度の経験年数が経つと
自身の経験を振り返る人と自己検証なく経験を根拠に実践を展開してしまう人とに分かれます。
(体験を一般化抽象化することなく単なるハウツーとして蓄積してしまう人は本当に多い)
後者は疑問に思うことができなくなってしまい
自身の実践で改善の余地があるのに(無自覚的には、だからこそ)
その工夫を怠りがちです。

グループワークでは、仮り初めの達成感を得てしまうこともよくあります。
グループワーク本来の目的を忘れて参加者の達成感を優先してしまうと
本末転倒のことも起こり得ます。

さてさて、年末のご挨拶

みなさま、貴重なお時間を割いてこちらのサイトにお立ち寄りくださり
どうもありがとうございましたm(_ _)m

リハやケアの世界では
観察・洞察のチカラを磨くよりも
確からしさを証明できると信じられている検査やバッテリーを追い求めたり
ハウツーを求める風潮がどんどん大きくなってきています。
無意識的には、だからこそ、声高に抽象的な理念を語りたがる人も増えてきています。
唱えれば叶うわけではないのに。。。

でも、同時に
そのような現実の中にあって
何か違う、と感じつつも違いを明確化できないが故に
余計に大きな不全感を抱き、どうしたら良いのか困惑している人も
増えてきていると感じています。
かつての私もそうでした。

当時、まずは身近に相談できる人に相談し
同時に、相談しても仕方ないということがわかり
自身で、手探りで実践していくしかないと腹をくくり
手当たり次第に研修会に出席し
手当たり次第に論文や本を読み漁り
ずいぶんと遠回りをしてきました。
私個人にとっては、意味ある遠回りだったと思いますが
今の若い人たちが、当時の私と同じような遠回りをするのは
リハやケアの世界や対象者やご家族の立場に立てば
積み上げができないことを意味しています。

私が蓄積してきたことは
実際に現実的に具体的に、対象者とご家族の役に立つ、ということです。

同じ願いを希求する人たちの役に立つことを願って
これからも記事更新をしていきます。

来年がますます良い年でありますように。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

『「食べるチカラ」を活かす食事介助』開催


2025年2月22日(土)19:00〜20:30に
小田原駅東口にある、おだわら市民交流センターumeco
『「食べるチカラ」を生かす食事介助ー基礎編』について勉強会を開催します!

食事介助をしている方なら、職種を問わずどなたでもご参加いただけます。
参加費 500 円。先着 20 名まで。

現行の食事介助には幾多の問題点があると感じています。
口はばったいことを言いますが、事実なので書きますと
他の人では「食べることの援助」ができなくて
対象者の方も介助者も困っていたケースに対して
私が介入したことで、もう一度「安全に」「円滑に」食べられるようになった体験を多数しています。
意思疎通が困難な最重度の認知症のある方でも可能です。

ところが
そのような方に対して、
「認知症だから無理」
「認知症だから食べられなくて当たり前」
「認知症だから誤嚥性肺炎は仕方ない」
「ちゃんとした介助をしたいけど時間がないから無理」
などと、どれだけたくさんの職種のたくさんの人に言われてきたことか。。。
それでも、私は結果を出してきました。
その知識と技術を1人でも多くの方に伝えていきたいと考えています。

「ムセるからといって、トロミを多く入れる」
「ムセの有無を食べ方の指標にする」
「どんな風に食べているか摂食・嚥下5相に沿った観察をしていない」

これらは現場あるあるの食事介助の問題点です。

ほとんどの人は
美味しく食べていただきたい、と願って食事介助をしているはずです。

ところが
現実には、どう介助すべきか、どんな介助をしてはいけないのか
そして、それらはなぜなのかということを
養成過程において、具体的に明確に言葉にして教えてもらっていない
のです。

教えてもらっていないから、知らなくても仕方ないのかもしれません。
けれど、知識がなくてもきちんと観察している人は
どこか、おかしい。何か、おかしい。
でも何が起こっているのか、どうしたら良いのか、わからなくて困っているはずなのです。
そして、相談してもちゃんと答えをくれる人がいないから
聞きたくても聞けないことを感じているはずなのです。
そういう人にこそ、聞いてほしい。

現在の摂食・嚥下に関する知見の多くは
脳血管障害後遺症片麻痺のある方の急性期を元にして集積されてきました。
その対象では適切なことでも、
生活期や慢性期にある方では、不適切なこともあるのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これから3回に分けてシリーズ形式で勉強会を開催します。

1)基礎編:2月22日(土)開催
  食べ方を観察できるように、食べ方の機能解剖を具体的に説明します。
  自分自身でスプーン操作を自己修正できるように事例を提示して説明します。

2)実技編:
  参加者同士での介助体験を通して
  スプーン操作による食べ方の違いを体験していただきます。
  対象者にとっての「環境因子」としてのスプーン操作の影響の大きさについて
  ご説明します。

3)環境編:
  食事を自力摂取できている方に対して
  姿勢やスプーンやコップという食具の影響の大きさ、工夫の考え方について
  ご説明します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

食事介助に困っている方
現行の食事介助に漠とした疑問を抱いている方
本当に対象者に寄り添ったケアを実践したい方
どうぞご参加ください m(_ _)m

オンライン開催をお待ちくださっている方
来年度にオンラインでも開催予定です。
今しばらくお待ちください。

お申込は _ こちら _ からどうぞ。
    
お問い合わせは _ こちら _ へお願いします。

オンライン認知症研修会開催のお知らせ


どなたでも参加できる研修会のお知らせです。
メディカルマークスターさん主催で平日夜間オンラインで認知症にある方へのリハについて
研修会が開催されます。

現行の方法論に限界を感じている方
単なるハウツーを提供することに疑問と罪悪感を感じている方
本当に認知症のある方に寄り添った対応ができるようになりたいと願っている方
日々の臨床に困っている方
どうぞ、ご参加をご検討ください。

理念を唱えるのではなく
理念と実践を結びつける考え方とその考え方に基づいた実践例をお話します。
他では聞くことのできないお話です。

詳細・お申込・お問い合わせは、_こちら_ をご参照ください。

   

伝授!生活期のポジショニング(12)多職種連携


ポジショニングというのは
食事と同じで多職種連携が要求されます。
そこで、悩んでいるセラピストも多いのではないかと思います。 
   
ここで誤解が多いのですが
どうやってポジショニングに協力してもらえるのか考えるのではなくて
私たちセラピストが本当に考えるべき、為すべきことは
第一に対象者に「本当に良いこと」を提供し「結果を出す」ことです。
「対象者が良くなった」という事実です。

その事実があれば
必ず他部門の人で協力してくれる人が出てくるものです。

なかには
それでも、文句を言ったり、足を引っ張ったりする人もいますが
それは、その人固有の問題なので気にすることはありません。
その人とその上司が考えるべき問題です。
スルーしておけば良いのです。
あまりに目に余るようなことがあれば、自分の上司に報告しておけば良いし
状況によっては、ガツンと対応しても良い時もあります。
(上手にできれば、状況を逆手にとって周囲の人を一気に味方につけることもできます)

多くのセラピストが
完全な協力体制という理想から差引マイナスで現状を見て
完全な協力体制、
常に適切にポジショニングを設定してくれたり、
スポンジの装着や脱着に100%協力してくれる体制を想定して
現状への不備・不満を訴えますが
まず、自分自身が対象者に対して
100%良いこと、結果を出すようになれることの方が先なのです。
その理由は2つあります。

自分自身が100%良いことを提供できれば
自分以外に良いことを提供してくれる人が出てくることの意義を理解できるようになります。

30%の良いことを提供できる人が10人いるよりも
100%の良いことを提供できる人が1人いることの方が
対象者にとって有益です。
100%の良いことを提供できる人がいれば
対象者の方は「本当は自分はここまでできるのだ」ということを
無意識であっても感受できるので
その方自身を無意識のうちに支えることになります。

100%の人が1人いる。
2人になればもっと良い。
3人になればずっと良い。

これが1つ目の理由です。
まず、最初の100%を実践できる人が現れることが必要なのです。
是非、最初の1人になってください。

2つ目の理由は
理想から差引マイナスで現状を見る、という考え方は
対象者の立場での視点ではなく、自分自身の困りごとの視点になっているからです。

  仕事として、やっているのですから
  自分自身の困りごとであれば自分自身が解決すべきで
  仕事として、職場としての困りごとを考える時の根拠は
  対象者にとっての視点で考える
べきなのです。
  ただ、解決の過程において現実的に可能か、どうかというところで
  考慮すべきはそこで働いている人の現状、ということになります。

つまり、問題解決において
視点も考え方も何もかもごっちゃにしている。。。
考え方や問題設定の問題が存在しているのです。
そして、そのことに無自覚であるという。。。

私たちの側の問題ですから
私たちが改善することが可能です。

大切なのは考え方、視点です。

Bestを望んで差引マイナスで考えるのではなく
Betterを積み重ねていく

どんな職場でも100%の職場はあり得ません。
そして、どんな職場でも0%の職場もまたないのです。
だから、そこから積み上げていくことができます。

その過程において
最初の一歩は、まず、自分自身が変わることです。
自分自身が100%の良いことを提供できるようになることです。
上には上がいるのです。

 マハトマ・ガンジーの言葉
『 You should be the change that you want to see in the world. 』
  あなたがこの世界に望む変化にあなた自身が成りなさい。

伝授!生活期のポジショニング(11)手指の拘縮にスポンジ:関連事項


手指だけが拘縮を起こしているというケースもあるかもしれませんが
ほとんどの場合、全身の問題ですから
手指にスポンジを装着する時には臥床時や離床時のポジショニングも設定します。
その上で手指にスポンジを装着すると一層効果的です。

そのスポンジですが
オートバックスやイエローハットなどのカー用品店で購入しています。

Amazonでも購入できますが、スポンジの反発性を確認してから購入した方が良いと思います。
私は _こちら_ の商品を使用しています。

まず、反発性が弱目のスポンジで小さく作ります。
ここがポイントです。
修正するのではなく、援助するのですから、
受け入れられる変化にとどめる、負担をかけない、他部位に代償させない

ということが大切です。

作成したスポンジはガーゼでくるんで手に固定しています。
本来、皮膚に接したガーゼは使い捨てるものですが
諸般の事情で難しい場合もあるかもしれません。
他の方と使い回すことのないように
その方専用で洗って期間を決めて交換しても良いかもしれません。
ただし、血液や膿などで汚染されたガーゼは必ず破棄するようにしましょう。
  
スポンジは、入浴時などに洗ったりアルコール消毒して乾燥させて再利用します。
理想は、毎日交換できることです。
なぜかわかりませんが、つぶれて変形したスポンジにアルコールスプレーをすると
ふっくらと反発性が戻り、形も元に戻ります。

他部門が紛失してしまうことも起こりえますから
可能であれば、洗い替え用に1つ、紛失に備えてもう1つ
最初に3つ同じものを用意しておくと安心です。

退院・退所時には
スポンジの意義を文書化したものを用意して
スポンジと一緒に持っていっていただきます。
意義を理解した上で使うことが重要ですが
たいていの人はスポンジの意義を知らないので説明が必要です。

・・・関連記事・・・
「 拘縮悪化予防スポンジ 」
スポンジでROM
本当にオススメ!スポンジリハ
   
それぞれのタイトルをクリックすると掲載記事をご覧いただけます。

「目標設定」講演無事終了


12月8日(日)に国際医療福祉大学小田原校で開催された
第6回神奈川県臨床作業療法大会での講演2「なんちゃって目標からの卒業ー自分自身に問い直す」を
無事に終えることができました。

今回、なんといっても強く感じたのが
木村大会長はじめ実行委員の皆様がとても気持ちの良い方ばかりだったことです。
事前のやりとりでも丁寧にご連絡いただいたので安心して当日に臨むことができました。
大変お世話になりました。どうもありがとうございました。
このような大規模のイベントの準備は多岐にわたるので
臨床をしながらの毎日、とてもお忙しかったのではないかと思います。
みなさま、本当にお疲れ様でした。

おかげさまで、目標設定の講演も無事に終えることができました。
終了後に何人もの方からお声かけいただいたり
ある養成校では実習前に取り入れてくださっていると教えていただき
本当に嬉しく思いました。

構成障害とか遂行機能障害という言葉を知っていても
立方体透視図模写テストやトレイルメイキングテストをしても
構成障害とは何ぞや、遂行機能障害とは何ぞやと言明できなければ
日常生活場面でどのようにそれらの障害が反映されているのか観察することができません。
それとまったく同じように、
目標とは何ぞや、行動とは何ぞやということが言明できなければ
目標を目標というカタチで設定することはできないのです。

「関節可動域の維持・改善」「筋力の維持・改善」は目標ではありません。

目標設定について、詳しく知りたい方は _こちら_ をご参照ください。

良い目標を設定することができるようになれば
現行のポジショニングや食事介助、認知症のある方への対応のおかしいところ
理念と実践の乖離や評価と治療の乖離といった現状をまざまざと観察することができるようになります。
そして、自分自身が理念を実践の根拠とするように
評価を治療の根拠とすることができるようになることが叶います。

自分で自分を良いセラピストに育てることができるようになるのです。


オッティ・クニ子も健在でした!
クリスマスバージョンですね (^^)

伝授!生活期のポジショニング(10)手指の拘縮にスポンジ

人の手の筋緊張は
どんなに強い拘縮のある方でも24時間同じ筋緊張ではなく
必ず変動があるものです。
その変動をスポンジの反発性を活かして増幅させるところに意義があります。 
だから、スポンジを外しても、手指が伸展・開排肢位を保つことができるのです。
よくある市販品やタオルやガーゼを巻いて握ってもらっても
大抵、外すとキューっと一気に握り込んでしまうでしょう?
スポンジであれば、適切に作成できればそんなことはまずありません。

筋緊張の変動を生かすということは、当然、前提として
臥床時・離床時に適切なポジショニングが設定できることは必須となります。

このスポンジセラピーの良いところは
spasticityだけでなくrigidityへも対応可能で
人の手によるリラクゼーションの手間を省略して
関節そのものを動かしたり、その次の展開へと結びつける時間を確保できる
ところにあります。

スポンジセラピーで良い結果が出ない時には
まず、自身の選択と対応の適・不適について確認していただきたいと思います。
決して、手指だけを見て過剰な大きさ・過剰な反発性で作らないでいただきたいと思います。
末梢を過剰に外的に見た目だけ伸長させれば近位部の過剰収縮を招きます。
既に説明したように、大腿四頭筋や縫工筋などポジショニングのクッションと
全く同じことが違うカタチで起こっているのです。

修正・改善するのではなくて、援助するという観点に立って
手関節や肘、肩関節に負担をかけないように作成してください。

また、手指の拘縮が長期にわたっていた方の場合に
皮膚も短縮していることが往々にしてありますので
過剰な伸展位の設定は皮膚を傷つける恐れがあります。

私は、通常、小さめ・弱めに作って上肢全体の状態を確認しながら
必要であれば2個目、3個目で完成版を作成するようにしています。

適切に、スポンジの大きさ・形・反発性を選択することができれば
最初は嫌がって拒否をしていても
拒否の程度が装着時のみに限定されたり
拒否がなくなったり
痛みを訴えることもなくなったりしてきます。

たぶん、「スポンジを装着すると楽だ」ということが実感できているのだと思います。

拘縮が強く、筋緊張が亢進している方ほど
スポンジセラピーによって状態が劇的に良くなりますから
他職種への説明の説得力があります。

  

伝授!生活期のポジショニング(9)車椅子座位設定のポイント


車椅子離床時のポジショニングは
端座位をとっていただいて確認しています。
どのような介助をしたら(どこを支えれば)端座位が取れるのか
支えた部分にクッションや巻きタオルを設置
しています。

明らかに介助端座位をとることが難しい方は
ティルト型車椅子に座っていただいて
(1)前から見て(2)左右両側から見て姿勢確認をします。

まず、第一に確認するのは
車椅子との不適合がないか、どうかです。
特に、座面の奥行きと乗車する対象者の方の大腿長が不適合だと
臀部の前方への滑り座りを惹起させることになりますので要注意です。

可能であれば
対象者の体格と車椅子座面の横幅が大きく異ならない方が良いと思います。
現実には選択肢が限られていることの方が多いと思いますので
対象者の体格よりも車椅子座面の横幅の方が大きい時には
側面をクッションで補助するなどの工夫で補います。

最後に
対象者固有のポイントに対処します。

普通型車椅子に乗車可能な方で
拘縮によって脚長差があれば修正するのではなくて
脚長差があっても上位の体幹に影響が及ばないようにポジショニングを設定します。

普通型車椅子で体幹が側方に傾いてしまう方の場合には
表面的に傾きに対処するのではなくて
端座位の状態をよく観察して、端座位での対応だけでは困難な時には
ティルト型車椅子でティルトを少し傾けた状態にすると
体幹の傾き以外の本来のその方の座り方を観察することができるので
そこを観察して対処します。

気をつけなければならないことは
車椅子上で傾きがある方に対して
クッションを入れ込んだりすることはしても
臥床時のポジショニングを疎かにしてしまいがちなことです。
車椅子上で身体が傾いている方というのは
体幹が低緊張か高緊張かのいずれかですが
臨床的には高緊張の方の方が圧倒的に多いです。
臥床時のポジショニングを設定しただけで
車椅子座位での傾きがなくなるというケースを多数経験しています。

ただ単に車椅子座位時に傾いている側にクッションを当てこむような
表面的な対応からは卒業しましょう。