理屈で考える:ムセたらトロミ


ムセたら食事を中止する人も多いけど
ムセたら飲み物にすぐにトロミをつける人もとても多いですよね。

確かに、
トロミは飲み物の粘性を高めてゆっくり通過するので
喉頭挙上のタイミングが遅い人には有益だったりします。

ですが、
ムセたからトロミをつけたのに、まだムセる方もいます。
そうするとすぐに、もっとトロミをつけていませんか?
「トロミ剤を大さじ3杯入れるように」って言った人もいましたけど
トロミ剤大さじ2杯でも結構ベッタリと口腔内や咽頭にへばりついて違和感バリバリです。
介助に従事する人は是非トロミ剤を入れた飲み物を飲んでみていただきたいものです。

誤解のないように付け加えると
私が若い頃に比べるとトロミ剤はとても進化しています。
昔は変な匂いと味がしてもっとベッタベッタにへばりつく感じがしましたが
最近のトロミは変な匂いや味はほとんどしなくなって
へばりつきもずっと少なくなってきていると感じています。
トロミ剤があるから、水分を安全に飲める方がたくさんいます。

ただし、どんなに良いものでも扱い方が不適切であれば
効果があるどころか逆効果になることすら起こり得ます。

それが、口腔期に問題があって二次的に咽頭期の能力低下が起こっているケースです。
実は、そのようなケースは生活期にある方や認知症のある方にとても多いのです。

不適切なスプーン操作によって誤介助誤学習が生じ
舌が後方へ引っ込んでしまったり
板のようにガチガチに固くなってしまうと
舌のしなやかな動きが損なわれてしまって
スムーズに食塊を再形成したり送り込んだりする働きが低下してしまいます。
その結果、喉頭挙上の動きまで損なわれてしまうのです。

舌の動きが低下しているのに
トロミをたくさんつけて粘性を高めれば
ただでさえ動きの悪い舌にもっと負担をかけることになってしまいます。
だから送り込みがうまくできなかったり
喉頭挙上の動きが阻害されたりするのです。

摂食・嚥下5相にそって食べ方を観察すると
本来の困難が咽頭期にあるのか、口腔期にあるのか、観察することができるようになります。
口腔期に本来の困難があって咽頭期の能力が保たれている場合には
むしろトロミの粘性は下げて、必要最低限にしてから、
食べ方・飲み方の再学習を行うと
誤嚥することなく安全にスムーズに食べたり飲んだりすることができるようになります。

ムセたらトロミ、というパターン化した対応はもう卒業しましょう。
ムセてもムセていなくても食べ方をきちんと観察するようにしましょう。


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