食事摂取量や水分摂取量が少ない方に遭遇することも多々あります。
そんな時に
「ちゃんと食べてね」
「もっと食べてね」
「食べなきゃダメよ」
と言う職員は、まだまだ多いようです。。。
私は
「食べてねと言う」のではなくて、
「食べられるようになる」ために何をするのが適切なのかを考えます。
そのために、その方にとって「食べられない必然」を、
今何がその方に起こっているのかを、観察します。
まずは、事前情報を確認して
既往歴や現病歴を把握し
体温表を確認して
摂取量やその変動と緊急性の有無を判断して
それから食べ方を観察しています。
疾患や医学的緊急性がなくて
摂食・嚥下5相にも問題がなければ気持ちの問題を考慮します。
精神科病院に入院しなくてはならないほどに
原因が何であれ混乱状態に陥った方は
周囲の方だけでなく、当のご本人も心身ともに疲弊しています。
軽いうつ状態にあることも少なくありません。
当然、食欲もあんまりない。。。
提供されたトレーの上に整然と並んだお食事の見た目のボリュームに
圧倒されてしまって一層食べる気持ちが失せてしまう。。。
このような状態のある方が
「ちゃんと食べてね」
「もっと食べてね」
「食べなきゃダメよ」
「飲まなきゃダメよ」
と言われたらどう感じるでしょうか?
飲食することに関して医学的緊急性がない
気持ちの問題が大きいと判断した時には
見た目の負担を軽減するようにします。
つまり、1回の提供量を減らします。
見た目にコンパクトな栄養補助食品を提供したり
小さめのコップに半分だけ飲み物を入れて提供したり
これだけなら飲めるかも?と思っていただけるような
飲食場面を提供します。
声かけも
「これだけは全部飲み切ってください」
なんて絶対に言いません。
「もし飲めたら飲めるだけでいいから召し上がってください」
と言います。
少しうたた寝をしていたら
室温を上げておいて
目覚めに冷たい飲み物を提供しますし
肌寒い時には暖かい飲み物を提供します。
味がはっきりわかるように、濃いめに入れたお茶を出したります。
そうすると
食堂では飲み渋っていた方が
一気にごくごくと飲み干す。。。なんてことは多々あります。
近時記憶障害が進行している場合も多いので
1回に100ml摂取できたら、しばらく時間を置いてから
もう一度小さめのコップに半分ほど
「飲めるだけでもどうぞ」とお出しします。
近時記憶障害が進行していれば
さっき飲んだことを忘れているので
初めての体験として飲み干してくれたりします。
どんなに勧められても食堂ではほとんど飲まなかった方が
リハ室では300〜400ml飲んでいる。。。とか、よくあります。
飲めた、食べた。。。という体験を蓄積していき
心身の疲弊も癒やされた頃には
いつの間にか通常量を食べられるようになっていくものです。
これらは直接援助の考え方ですが
同時に間接援助も行っていきます。
食欲不振になるくらい、辛い思いをしてこられたのだから
「今のままでも大丈夫なんだ」と実感できるような体験を援助していきます。
心身の疲弊からの回復を支え、結果として食欲も戻ってくるように。
「飲んで」と言うのではなく
「飲みたくなる」ように、その方の状態に応じて場面設定を行う。
「言う」のではなくて
飲む・食べるられるように「援助する」のが私の仕事ですから。
「ちゃんと食べてね」「もっと食べてね」って言うだけなら
近所の人でも誰にでもできますよね?
もしかしたら近所の人の中にも
そう言ってしまうことの弊害を慮って躊躇する人だっているかもしれません。
飲食の摂取量が少ない
↓
飲食の摂取量を上げるためにどうしたら良いか? と考えることは
たとえ無自覚であったとしても、
食べることの援助ではなくて
食べさせるための工夫になってしまいます。
飲食の摂取量が少ない
↓
飲食の摂取量が少ないという事実に反映されている
その方の状態像、つまり
疾患、既往、脱水や低栄養の有無、摂食・嚥下5相、心身の疲弊
元々の摂取状況や好みなどを把握する
↓
無理なく摂取できる場面設定
↓
飲めた、食べられたという体験の蓄積と再認体験の反復
心身の回復
↓
摂取量改善
という道を辿るケースもたくさんあります。
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