水分摂取の促し方

水分を控える認知症のある方は大勢いらっしゃいます。

水分補給の時間帯に「飲んで」と声をかけるだけではなくて
飲みなれた飲み物や好きな飲み物を提供するだけでなくて
さらにもう一工夫。

「もうお腹いっぱいで飲めない」
と言われたら
少し時間を置きましょう。  (時間干渉)

できれば
体操したり
お話したり
何らかの行動をしてもらってから
「ちょっとひとやすみ」と言って飲み物を勧めています。  (動作干渉)

そうすると、たいてい飲めるようになります。

お腹いっぱいという満腹感の自覚と表出ができるということは
とても大切な能力の一つですので
その場で飲んでいただくことを無理強いしない方が良いと考えています。

私が普段何をしているかというと
「少し時間を置く」というのは
時間が経つと忘れてしまうという近時記憶を逆手にとって
時間干渉を活用して新鮮な気持ちで水分摂取に向き合ってもらえます。

また、何か実際に動作をしたことによって
飲みやすくもなります。
別の動作をしたことによって忘れてしまうという近時記憶の低下を逆手にとって
動作干渉を活用して新鮮な気持ちで水分摂取に向き合ってもらえます。

忙しいとどうしても
時間の余裕がなくなるだけでなく
気持ちの余裕がなくなってきますから
「今、ここで」すぐに飲んで欲しいという介助者側の気持ちが生まれてきます。

でも、「今、ここで」を優先すると
結果的にであったとしても
「あんまり飲みたくないのに、飲めと言われたから飲んだ」
「仕方ないから、相手の言うことを聞いて飲んだ」
というネガティブな感情が起こってしまいかねません。

そして、ご存知の通り、感情記憶は残るものです。
今はまだ、相手に合わせるという能力があっても
病状が進行して相手に合わせられなくなった時に
イヤイヤながら合わせて飲んだという感情記憶とエピソード記憶が想起されて
強い拒否となって現れてしまうかもしれません。

今、短期的に問題が生じなかったとしても
本当に適切な対応でないと
長期的に問題が現れる。しかも、認知症のある方がネガティブな感情を抑圧した分も相まって
もっと大きな問題となって現れる恐れがあります。

このくらいの時間帯の中で
という「幅」を考えて対応する。

その時に
相手の近時記憶の程度、時間干渉や動作干渉にどの程度影響されるのか
ということを把握した上で対応すると
今もこれからも、お互いにとってスムーズな水分摂取につながると考えています。

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