量的側面というのは
伝える言葉のボリューム、長さのことです。
単語なら理解できるのか
一語文なら理解できるのか
通常の文章の長さでも理解できるのか
「認知症=記憶力の低下」という認識は
今や一般の方にも浸透していると思いますが
逆に、認知症では記憶力低下以外にも障害が起こる
ということが認識されていないこともあります。
言葉の理解が低下する
ということは案外認識されていないようです。
前頭側頭型認知症の下位分類に意味性認知症という病気がありますが
意味性認知症では言葉の意味理解が中心的に低下してしまいます。
そこまで顕著ではないにしても
アルツハイマー型認知症であっても
病状進行とともに言葉の理解が低下するケースはとても多いものです。
なかでも
「長い言葉は理解できない」という状態像は頻繁に見かけます。
こういったことをご家族にご説明したところ
「あぁ!あれはそういうことだったんですね」と言われたことがありました。
「以前に、家のに(認知症のある方に)
『そんなに長ったらしく言われたって、わかんねぇんだよ!』
って怒鳴られたことがあったんですが
それはそういうことだったんですね」
ご家族がそうおっしゃったんです。
すごくないですか?
認知症のある方はちゃんと言っています。
「長い文章で言われてもわからない。
(短い文章で言ってくれよ)」
でも
「認知症=記憶力低下」
とだけ思っていると、ご本人がちゃんと言明しているのに
聞き落としてしまうんですね。
ただ
このご家族は何か気になることがあったんでしょう。
心のどこかに引っかかっていた。。。
だから、私が説明した時にスッとエピソードを思い出すことができたのだと思います。
目の前にいる方を知識に当てはめるのではなく
目の前にいる方の役に立てるように知識を活用する
認知症という状態像は多様な症状・障害が現れています。
アルツハイマー型認知症は確かに記憶の低下が主症状ではありますが
その他にも様々な症状・障害が起こります。
その一つが言葉の理解の低下であり、長い声かけは理解しにくくなることがあります。
そうと知ってさえいれば
私たちが扱う言葉を
目の前にいる方その時々の理解力に合わせて
言葉の長さを調整するのは、今すぐにでもできることです。
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