
写真のように身体が傾いていると、
第一選択として、右脇にクッションを当てているのではありませんか?

でも、クッションを当てた後に状態を確認してほしいと思います。
クッションを当てたって、右側への傾きは解消されていませんよね?

そもそも、まず全身を観察すると、
車椅子の座面に対して臀部が斜めになっています。
クッションを当てるよりも先に、座り直しをすべきです。
そして
座り直したにも関わらず、身体が傾いてしまう場合には
1)体幹の過剰緊張
2)感覚入力の著明な左右差
3)疲労による座位保持時間の限界
4)その他
の理由によって引き起こされていますので、ここを評価することが重要です。
1)の場合
座位姿勢そのものへアプローチよりも
実は臥床姿勢へのアプローチが重要な場合が多いものです。
臥床時に良肢位保持と言いながら、
実は筋緊張を亢進させてしまうようなポジショニングをしていると
座位姿勢が崩れてしまうことがよくあります。
臥床時のポジショニングを修正することで座位姿勢が改善されるケースに多々遭遇しています。
2)の場合
基礎疾患として、中枢神経障害を持っている方で臥床時間が多い時に起こります。
ベッドの位置は固定されていることが多いので
どうしても職員の関与が同一方向からに限定されてしまいます。
そうすると職員の関与がない側からの感覚入力が減少し著明な左右差を生むことになります。
そのような場合には、可能であれば離床時間を増やし、意図的に職員の関与する位置やテレビや人の出入りなどの感覚入力の左右差を減少させるような環境調整を図ります。
直接的な身体アプローチはせずとも座位姿勢が改善されるケースもあります。
3)の場合
私は普段電車にはほとんど乗りませんが
たまに電車に乗って座席に座れたとしても満員で身じろぎもできない状態だと
長時間座っているとお尻が痛くなって辛くなってきます。
対象者の場合、日中の離床時間が長いと
たとえ高機能の車椅子用クッションを使用していたとしても
辛くなったとしても不思議はありません。
対象者の方は自身の動ける部位の動ける能力を使って対応しようとしますから
前方に滑ったり横に傾いたりすることがあります。
臥床して身体を休める機会を設けることが必要です。
4)の場合
膝関節の拘縮の左右差によって座位姿勢が崩れてしまっていた方もいましたし
全身の伸筋痙性のために股関節の90度屈曲座位が困難な方もいましたし
実は脱肛があって仙骨座りになっている方もいました。
多様な状態がありますので、きちんとした評価が必要です。
私の経験では
生活期にある方で圧倒的に多いのは上記1)のケースであり
しかも、対応し損ねていることが多いケースでもあります。
リハの世界では、身体の総体的な把握がなされないために
「座位の不良姿勢→座位でのポジショニング」「臥位の不良姿勢→臥位のポジショニング」
にとどまってしまい、臥位でのポジショニングとの関連性を認識できていないセラピストも少なくありません。
座位で側方に身体が傾いている対象者は
骨盤周囲筋の過剰筋緊張が起きていることが多く
臥位での過剰筋緊張を抑制するポジショニングによって
座位でのポジショニングはせずとも
座位姿勢が改善されるというケースを多々経験しています。
姿勢は表面的に整えるものではなくて
姿勢というカタチに反映されるハタラキを改善すべきなのです。
現場あるあるなのは
自身の気になるところだけを
そう見えないように整える方法論です。
その最たるものが、傾いている身体にクッションを当てるというやり方です。
身体が傾いていたら
痛くないように危なくないように
クッションを当てても良いですが
その一方できちんと状態把握、評価をして
その方に今、何が起こっているのかをきちんと観察し洞察し適切な対応をすべきです。
「座位で身体が傾いている→クッションを当てる」というような単なるハウツーの当てはめ
という臨床姿勢からはもう卒業すべきだし、卒業できる時期に来ていると思います。
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