簡易ヘッドレスト


普通型車椅子に座れるけど
頸部後屈してしまう方に対する工夫です。
ティルト方車椅子を使うほどではないけど
何もしないとしんどそう。。。という場合に
すぐに作れる簡易ヘッドレストです。

必要なのは
プラスチック製の棒(写真では突っ張り棒:45〜60㎝)を2本
伸縮するベルトを3本
結束バンドを数本
滑り止め 2枚
(材料はすべて100円ショップで購入しました)

<作り方>

1)棒を車椅子のバックレストの隙間に突っ込む
  この時棒の長さが短いと後を振り向いた時に棒が目に当たってしまう恐れがあるので 
  棒の長さは頭よりも高くなるように気をつけています。

2)棒を車椅子の手押しハンドルのポールに結束バンドで固定します。
  この時、伸縮ベルトの上端〜下端の間に滑り止め(写真では青紫色)を固定しておくと
  ベルトのズレを予防できます。
  写真では伸縮ベルト3本使用していますが
  (頭部後屈が著明であれば、支持性を高めるために伸縮ベルトの本数を増やします)
  この段階ではまだ結束バンドのはみ出た部分は切り落とさず調整できるようにしています。

3)左右の棒に伸縮ベルトを固定します。
  この時に後頭部がきちんと支えられているかどうかを確認します。
  大丈夫であれば、結束バンドを引き絞って、はみ出た部分をハサミでカットします。


4)伸縮ベルトにタオルを巻き付けます。
  簡単に縫い止めても良いでしょう。
  写真では後側で3ヶ所軽く縫い止めています。


簡易ヘッドレストは
材料の入手も簡単、安価で、すぐに作れます。
何よりも一番良いところは、伸縮ベルトの伸縮性が
対象者の方の頸部後屈の度合いに応じて、その都度対応してくれるところです。

自身で頸部中間位を保持できている時には
ベルトはあまり伸長しないけれど
頸部後屈方向に力が入ってしまった時でも
ベルトはしっかり伸長して頭部を支えてくれます。
頭部のもたれかけ具合に応じて、ベルトが伸縮して対応してくれるのが良いところだと思っています。

通常の布製のヘッドレストだと
頭部は支えられても頸部は後屈したまま。。。という時もあると思います。
伸縮ベルトだと、頭部の重さを支えつつ、頸部中間位へとアライメントも整えてくれます。


第10回DCゼミ対面研修会「現場あるあるの対応のウソホント」


リハやケアの現場で
常識のように行われている対応でも
よくよく考えると実はおかしなことがたくさんあります。

それらは
必死になって先人たちが為したことだと思いますし
部分的に整合性があり、一見すると効果があったように見えたので
継承されてきたのだと考えています。

科学は過去の知識の修正の上に成り立つ学問です。

常識とされている対応を行なっても
日々の対応での困りごとは無くなっていないのではありませんか?
研修会のアンケートで最も多いのが「対応の工夫」です。
それって、現行の対応での限界を実は誰もが無意識に感じているからではありませんか?

科学的ケアの実践が求められている今
もう一度、現場あるあるのそれらの意味と本質について
考え直すことが求められていると思います。

そこで
2026年2月28日(土)19:00〜20:30
小田原市民交流センターumeco の第7会議室にて
DCゼミ第10回勉強会を開催いたします。

具体的には
・「否定しない」って、じゃあどうしたら良いの?
・「褒めてあげる」って、おかしくない?
・「認知」「認知の人」「認知のある方」って、おかしくない?
・「ケアの統一」
・手段と目的のすり替え
・ 踏ん張って頑張らせる立ち上がり訓練はやめるべき理由
・ 手引き歩行するから歩けなくなる
などなど。。。

実は、日々小さな違和感を感じている
たとえ、その場は「うまくいった」ように見えても
実は内心のモヤモヤが消えない
という人はきっとたくさんいるんじゃないかと感じています。
その違和感やモヤモヤは正しいのだと伝えたい。
そして、どうしたら、本当に「認知症のある方に寄り添ったケア」を
「唱える」のではなくて「実践」できるようになるのかを伝えたい。

「科学は嘘をつかない。
 科学は多数決じゃない。」
日本の科学捜査の礎を築いた人の言葉です。
詳細は _過去の記事_ をご参照ください。

今、困っている人は、どうぞご参加ください。

お問い合わせは、_ こちら _

参加のお申し込みは、_ こちら _から どうぞ

お知らせ:認知症研修会@MARKSTAR


Medical MARKSTAR さんの主催で
3月5日(木)「知識編」
3月9日(木)に「評価編」
の講演をZOOMにて開催されます。

詳細は
https://www.markstar.net/dementia2026/
から、どうぞ。

認知症のある方の話を聴く:感情表出を促す


あけましておめでとうございます。

本年も情報発信に努めていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

さて
認知症のある方の感情表出を促すように話を聴くときには
事実関係の正誤ではなくて
話しているテーマをどのように感じているのか
感情に焦点を当てて聴くようにしています。

例えば
90歳代の方が
「お父さんの先生が亡くなったからお通夜に行かなくちゃ」
と発言された時に
ここで「お父さん」が夫なのか父を指しているのかはわかりませんし
どちらであったとしても既に亡くなられていることは事前情報から把握できています。
その先生であれば、おそらく亡くなられていると思われますが
いずれにしても、それらの事実は置いておいて
「きっとお世話になった方が亡くなられたから最後のご挨拶に伺いたい」
という気持ちは理解できます。

「とてもお世話になった方が亡くなられたんですね」
「それでお通夜に行こうとしていたんですね」
「不義理なことはできないですよね」
その方の特性を把握できていれば
どのような言葉を選択したら良いかは自然と浮かび上がります。

その方の方から
どんな先生だったか語り始める時には
その方に任せて語られていることをイメージしながら聴いていきます。

必要に応じて沈黙も大切にします。

帰宅要求があると
話を逸らそうとしたり
気を逸らすために何かさせたり
する人は多いけれど
帰宅要求があった時に介入可能であれば
きちんと感情表出を促すことで(だけで)
自然と帰宅要求が収まってしまうということは多々あります。


認知症のある方の話を聴く:事実確認と感情


・記憶の連続性を確認したい時には事実確認を優先する
・エピソード記憶を聴いている時や認知症のある方が言いたいことがある時には
 感情に焦点を当てて聴く

認知症のある方と話をする時には必ず自分の意図を明確にしています。
記憶の連続性を確認したいのか
認知症のある方に感情表出を促したいのか
意図が異なれば対応も変わります。

記憶の連続性を確認したい場合についてご説明します。

まず、その方の日課に沿って体験直後に尋ねます。
例えば、昼食後に(今日のお昼ご飯はいかがでしたか?)と尋ねます。
「おいしかったよ」
だけだと判断できないので
(何が一番おいしかったですか?)と尋ねます。
そこで具体的に献立名が返ってくれば覚えていることが推測されます。
(再生の可否を確認します)
ここで具体的な献立名が返ってこなければ
こちらから献立名を提示します。
(聴覚情報で再認ができるかどうかを尋ねます)

また、「このあと〇〇時にお部屋に伺いますね」とお伝えしてから
〇〇時に訪室した時の様子を確認します。
「あら、すみませんね」
「お待ちしていました」
と返ってくれば、お伝えした時刻から△時間は覚えてくれていたことがわかります。
「あら、どうしたんですか?」
と返ってくれば、お伝えした時刻から△時間は記憶の保持が困難だったことがわかります。

このように、意図的な会話ができれば
なんてことのない話の中で、拾えるエピソードがたくさんあることに気がつきます。
記憶の連続性については、こちらが意識してさえいれば
会話だけでもかなりの情報を収集できます。

認知症のある方が帰宅要求をしている時など
感情表出を促したい時には事実かどうかではなく
その方の感情に焦点を当てて話を聴くようにしています。
次回に詳しくお伝えします。

認知症のある方の話を聴く:重要なことは復唱する


認知症のある方の話を聴く時に
認知症のある方が発言した表現そのままを使って復唱するようにしています。

たとえば
「家に帰りたい」と言われたら
「家に帰りたいんですね」
「財布がない」と言われたら
「財布がないんですね」
と認知症のある方が発言した表現そのままを使って復唱します。
そのあとで、「それで急いでいたんですね」「それで困っているんですね」と言葉を継ぎます。

  クレーム処理の本を読んで時に
  「相手の言葉を復唱してから答える」と書いてあるのを読んだ記憶があります。
  あなたの言ったことを受け止めましたと言外に伝えることができます。
  そう言われてみれば、クレーム処理ではないけれど
  品物を注文した時のコールセンターの対応は、
  こちらの電話番号の確認の時に
  私が「ご、さん、の」と言えば
  相手も「ご、さん、の」と確認してきますし
  私が「ごじゅうさんの」と言えば
  相手も「ごじゅうさんの」と言う人がほとんどです。

声かけの最初は
相手の言った言葉を使って復唱するようにしています。

その後、話を聴きながら
相槌を打ったり、合いの手を挟んだり
時には、相手の話と同じ内容を違う表現で言い換えるようにしています。

「お父さんの先生が亡くなられたから早く行かなくちゃ」
「お世話になった方だから不義理なことはできない。
 それで急いで行こうとしていたんですね?」

「財布がどこにもないのよ!」
「大事なお財布が見つからないくて困っているんですね」

この1クッションを置くことで
「この人は私の言っていることをちゃんと聴いてくれる」
と思っていただけます。
会話のキャッチボールを強調して伝えることができます。

言葉は相手に伝わってこそ、言葉として機能します。

認知症のある方の話を聴く:声の大きさとトーンを合わせる


声かけの大切さについて
否定する人はいないし、みんなそう言うけれど
私は「何を言う」かよりも
「どんな声で」言うかの方が重要だと考えています。

〇〇という時に、なんて声をかければいいでしょうか?
とは尋ねますが
自身の声の大きさやトーンの意義を自覚している人はとても少ないし
自覚的にコントロールできる人はもっと少ないと感じています。

認知症のある方は言語理解力が低下すると
(たとえアルツハイマー型認知症でも言語理解力が低下する方はたくさんいる)
何か言われたことはわかっても、何を言われているか理解できなくなります。
一方でだからこそ、職員の口調を鋭敏に感受し、口調に反応していることが多いのです。

「立っちゃダメ」と言わなくても
「こっちに来て」と強い口調で言われて、それで怒ってしまう。。。
禁止表現を使わずに、修正してほしい行動を言葉で伝えたのに怒られたって言うけれど
そんな強い口調で言われたら、そりゃ怒りますよ。

声には発する人の感情が反映されます。

声の大きさとトーンを合わせることで
心理的同調を促す効果がある
と言われています。

まず、声の重要性を認識しましょう。
そして、相手の声の大きさとトーンに自身の声とトーンを同調させましょう。

大きな声やハリのある声の方には、こちらも同様に。
小さな声で落ち着いたトーンの方には、こちらも声を抑えめに。

一番、良いのは挨拶です。
「おはようございます」「こんにちは」
返ってきた言葉に反映された声の大きさとトーンを感受し、
同じような大きさの声とトーンで返します。
「今日も良いお天気ですね」「今朝は寒かったですね」
自然な会話の中で、声の大きさとトーンの同調を調整することができます。

初対面の方なら
まず、こちらが名乗ります。
「こんにちは。初めまして。」
「こんにちは」
「リハビリの佐藤と申します。〇〇さんですね?よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「〇〇さん、下のお名前を教えていただけますか?」
「△△と言います。」
「△△さんですね。漢字はどういう漢字を書くんですか?」
「え〜っと、鉛筆ある?」

ご自身のお名前は、まさしく長年慣れ親しんだものです。
あなた自身のことを知りたいという気持ちを言外に伝えることもできます。
これだけ会話が成り立てば、
声の大きさとトーンを把握し、同調させる機会を十分に確保することができます。
   
また、もしも、自身の名前という慣れ親しんだものでも、
うまく説明できなかったり、尋ねたことの枠組みで答えられなかったりすれば、
言語理解力が低下している恐れが高くなりますから、そのスクリーニングもできます。
もちろん、その日その時の体調もありますから
会話の初めに、まず、その方の声とトーンを把握し、
日を改めて再確認することから始めると良いと思います。

「認知症のある方の話をきちんと聴く」ことの前提として
声が無自覚に伝えてしまうことがあることをきちんと理解する。
そして、自身の声の大きさとトーンに自覚的になる。
相手のその時々の声の大きさとトーンに鋭敏になり、同調させられるようになる。
ということがもっと広まっていくと良いなぁと思っています。

認知症のある方の話を聴く:「聴いている」ことを伝える


まだ、感染症対策としてマスクをしている人も多いと思います。
マスクをしていると表情が伝わりにくいものです。
なので、意識して「表情」を伝える工夫をしています。

笑う時は、眼もくしゃっと笑う。
「笑う」を強調して伝えるようにしています。

話を聴く時には、相槌を打ちながら聴く。
「聴く」ことを強調します。

尋ねる時には、小首を傾げて「尋ねる」を強調する。

「表情」の代わりに「口調」で代償する。

認知症のある方は職員の
「何」を言っているのかという言葉ではなくて
「どんな風に」言っているのかという声や口調、表情などに
反応して怒ってしまうことが多々あります。

声かけの重要性を否定する人はいないと思いますが
一方で、職員の側の非言語的表出の重要性については
あまり重要視されていないものです。

当然、自身の非言語的表出に無自覚なことも多く
当然、自覚できないのでコントロールしようとする人も少ないものです。

特に、声や口調には発する人の感情が反映されやすいものです。
もっと自覚的になることと、コントロールしようとすることの重要性について
検討されると良いのにと、つくづく思っています。


認知症のある方の話を聴く:基本


もしかして、
このサイトにお立ち寄りくださる人の中に
認知症のある方とどうやってコミュニケーションをとったら良いのか
わからなかったり、自信がない人もいるかもしれないと思ったので記事にしてみます。

実習に行くと
「患者さんとコミュニケーションとってみて」
「ご利用者さんとコミュニケーションとってみて」
って言われることが多いんじゃないかと思います。

コミュニケーションとるって言われると
一生懸命話さなければって思いそうだけど
別に無理して笑わせたりすることじゃなくて
その方がどんな方なのか理解するためだから
聞き上手を目指せば良いのだと思っています。

知識があれば
意図的に質問をしたり
答えや答え方に注目することができますから
かなり、いろいろな情報を得ることができます。
せめて、4大認知症 は押さえておきましょう。

話の聞き方のポイントとして
私は次のことに気をつけています。
 
1)今はまだマスク装着が求められているところも多いと思います。
  こちらがマスクをしていると表情が伝わりにくいので
  意識して表情を強調するようにしています。
  ・笑う時には眼も笑う
  ・相槌を打ちながら聴く
  ・尋ねる時には小首をかしげる
  ・表情が伝わりにくいぶん、口調を強調する

2)相手の声のトーンと大きさに合わせる
  ・初対面の挨拶で声の調整も兼ねて相手の名前の漢字を尋ねる

3)重要な内容は、復唱する。
  ・認知症のある方が発言した表現そのままを使って復唱する。
  ・同じ内容で違う表現に言い換える

4)事実を確認する時と感情に焦点を当てる時と使い分ける
  ・記憶の連続性を確認したい時には事実確認を優先する
  ・エピソード記憶を聴いている時や認知症のある方が言いたいことがある時には
   感情に焦点を当てて聴く

5)言語表出が困難な時には、クローズドクエスチョンで確認する
  ・可否いずれも両方を尋ねる

順次、ご説明していきます。

頸部後屈してしまう方の食事介助


頸部後屈している方の食事介助で
現場あるあるの誤解にもとづく対応は
下の図のように、頸部を前屈方向へ動かしたり
ヘッドレストにクッションを入れたりするものです。
ヘッドレストにクッションを入れて効果があるのは
ヘッドレストと頭部の間に距離がある場合ですから
距離をクッションで埋めても頸部が正中位になるわけではありません。
無理にクッションを当てることでかえって後屈がひどくなってしまうことだってあります。


じゃあ、どうしたら良いのか。

まず、頭部の重さを支えます。
この時に大切なことは、決して頸部を前屈方向へ動かさないことです。
重さを支えるだけで良いのです。

<日総研出版「認知症のある方でも食べられるようになるスプーンテクニック」>

上図の赤い丸のところ、いわゆるボンの窪と呼ばれている部分を
介助者の前腕で支えます。
スプーンの背で前舌をしっかり押しながら介助をしていくと
頭部を支えている腕が軽くなるのを感じると思います。
軽くなる、ということは対象者がご自身で頭部の重さを支え始めたということです。
そして、たいていの場合、頭部が自然と前屈するようになっているのがわかると思います。

生活期にある方で
頸部後屈している場合は、誤介助に対する誤学習で頸部後屈しているパターンがかなりあります。


写真のように、上の歯でこそげ落とす介助を続けていると
頸部後屈を毎回の食事ごと、介助の1さじごとに誤学習を促しているようなものです。
ところが、誤介助誤学習ということは
正の介助をすれば正の学習が可能ということをも意味しています。

ここに適切なスプーン操作をする意義があるのです。

食事介助をしていて
頸部前屈の動きが毎回出てくるようになると
安静時でも頸部が正中位になっていることに気がつくと思います。

本当は怖い食事介助

食事介助の適不適によって
身体の状態も変わってしまうことも多々あるのです。