ポジショニングも、いまだに誤解が多い方法が為されがちです。
良い姿勢を作るために、可動域いっぱいに特に目につきがちな肘や膝を伸ばす
というケースを見かけますが、それでは逆効果になってしまいます。
ポジショニングは
筋肉の働きを休めて楽に姿勢を保持できるように援助するものです。
今の姿勢が悪いから、良い姿勢(通常姿勢)から差し引きマイナスで考えて
修正するものではありません。
このような座位姿勢の方は多く見かけます。
ちゃんとしたクッションがなくても
身近にあるバスタオル3枚で工夫することもできます。
この方の場合には
拘縮があるために実際的な脚長差が生じて
一層仙骨座りを増悪させていたため
実際的な脚長差をなくし、両側の坐骨に平等に体重支持できるよう
左足を床に降ろしていただいた上で
背部の巻タオルで体幹の伸展活動を援助したという対応をしました。
またベッド上で身体がねじれた状態で臥床されている方も多くいます。
ベッドと身体との隙間がないように
クッションや巻タオルを使います。
側臥位では筋肉の働きを休めるために骨盤帯と肩甲帯をきちんと支えることが重要です。
大切なことは
リラックスできるということであって
外見的に肘や膝を最大限伸ばすということではありません。
リラックスした結果として、肘や膝が伸びてくることを意図します。
クッションという外力を使って強引に肘や膝を最大限伸ばすことはできたとしても
2関節筋なので肘や膝の起止部つまり近位の関節が屈曲してしまいます。
肘であれば、仮に肘が伸びたように見えても筋肉自体がリラックスして伸びているわけではないので、肩が屈曲してしまう。
膝であれば、膝が伸びたように見えて股関節が屈曲してしまう。
これ以上関節拘縮が進まないようにという善意からであっても
結果としては逆効果の事態を引き起こしてしまいます。
ポジショニングにも
知識と技術は必要ですが、仮に知識と技術がなかったとしても観察さえできれば最悪の事態は防げます。
自身のとった方法が適切であったか否か、観察していれば
良かれと思ったことでも結果悪くなっていることに気がつけば
そこから考えるきっかけになります。
観察は大事です。
善意の元に為される行動であったとしても必ずしも良い結果となるとは限らない。
「地獄は善意で満ちているが、天国は善行で満ちている」
という言葉は対人援助職にとって示唆に満ちています。
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