
頸部後屈している方の食事介助で
現場あるあるの誤解にもとづく対応は
下の図のように、頸部を前屈方向へ動かしたり
ヘッドレストにクッションを入れたりするものです。
ヘッドレストにクッションを入れて効果があるのは
ヘッドレストと頭部の間に距離がある場合ですから
距離をクッションで埋めても頸部が正中位になるわけではありません。
無理にクッションを当てることでかえって後屈がひどくなってしまうことだってあります。

じゃあ、どうしたら良いのか。
まず、頭部の重さを支えます。
この時に大切なことは、決して頸部を前屈方向へ動かさないことです。
重さを支えるだけで良いのです。

<日総研出版「認知症のある方でも食べられるようになるスプーンテクニック」>
上図の赤い丸のところ、いわゆるボンの窪と呼ばれている部分を
介助者の前腕で支えます。
スプーンの背で前舌をしっかり押しながら介助をしていくと
頭部を支えている腕が軽くなるのを感じると思います。
軽くなる、ということは対象者がご自身で頭部の重さを支え始めたということです。
そして、たいていの場合、頭部が自然と前屈するようになっているのがわかると思います。
生活期にある方で
頸部後屈している場合は、誤介助に対する誤学習で頸部後屈しているパターンがかなりあります。

写真のように、上の歯でこそげ落とす介助を続けていると
頸部後屈を毎回の食事ごと、介助の1さじごとに誤学習を促しているようなものです。
ところが、誤介助誤学習ということは
正の介助をすれば正の学習が可能ということをも意味しています。
ここに適切なスプーン操作をする意義があるのです。
食事介助をしていて
頸部前屈の動きが毎回出てくるようになると
安静時でも頸部が正中位になっていることに気がつくと思います。
本当は怖い食事介助
食事介助の適不適によって
身体の状態も変わってしまうことも多々あるのです。
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