理屈で考える:「敬語を使わねばならない」


「おみ足を上げてくださいませ」

フットプレートに足を乗せて欲しいと思った職員が認知症のある方に告げた言葉です。
さて、その方は足をフットプレートに乗せられたでしょうか?
その方の生活歴の中に「おみ足」という言葉があったのでしょうか?

認知症のある方に対して敬語を使うように強く推奨する施設もあると聞きます。
たぶん敬語を使うことで敬意を表するという態度を涵養したいのかな?と思いますが
敬語って、言語表現が長くなりがちだし、婉曲表現が多いんですよねぇ。。。
認知症という状態像だと言語理解力が低下しているケースって非常に多いんですよねぇ。。。
そしてまたそのことを理解していない職員も非常に多いんですよねぇ。。。

ICD-11では認知症の定義として
記憶だけを突出して扱わずに他の6つの障害と併記されるようになりました。
そしてその全7障害の一つに「言語」があるのです。

認知症のある方に敬意を示そうとして敬語を使うことは理解はできますが
言葉は相手に伝わってこそ言葉
こちらの意図がどんなに崇高でも相手が理解できない言葉を使うのは
効果がないどころか逆効果にすらなってしまいます。
職員側のモットーやスローガンの実践はできても
目の前にいる認知症のある方の立場に立った声かけとは言い難いものです。
私が以前から提唱している声かけの工夫については_こちら_をご参照ください。
障害と能力の観点に立って視聴覚情報を整理して使い分けることを提唱しています。

敬意は非言語でも伝えることはできます。

もっというと、感情は伝わるものです。

敬意をどう示すか考える以前に
敬意を抱かざるを得ないくらいに認知症のある方の能力と特性を把握できるようになるのが先なんじゃないかな?と思いますし
認知症のある方の能力と特性を把握できないのに
表向きに敬語だけ使っても敬意は伝わらずに言行不一致を一番察するのは
当の認知症のある方だと思います。
認知症のある方の感性の鋭さは、ちゃんと接している人ならみんな実感していることだと思います。

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