
声かけの大切さについて
否定する人はいないし、みんなそう言うけれど
私は「何を言う」かよりも
「どんな声で」言うかの方が重要だと考えています。
〇〇という時に、なんて声をかければいいでしょうか?
とは尋ねますが
自身の声の大きさやトーンの意義を自覚している人はとても少ないし
自覚的にコントロールできる人はもっと少ないと感じています。
認知症のある方は言語理解力が低下すると
(たとえアルツハイマー型認知症でも言語理解力が低下する方はたくさんいる)
何か言われたことはわかっても、何を言われているか理解できなくなります。
一方でだからこそ、職員の口調を鋭敏に感受し、口調に反応していることが多いのです。
「立っちゃダメ」と言わなくても
「こっちに来て」と強い口調で言われて、それで怒ってしまう。。。
禁止表現を使わずに、修正してほしい行動を言葉で伝えたのに怒られたって言うけれど
そんな強い口調で言われたら、そりゃ怒りますよ。
声には発する人の感情が反映されます。
声の大きさとトーンを合わせることで
心理的同調を促す効果があると言われています。
まず、声の重要性を認識しましょう。
そして、相手の声の大きさとトーンに自身の声とトーンを同調させましょう。
大きな声やハリのある声の方には、こちらも同様に。
小さな声で落ち着いたトーンの方には、こちらも声を抑えめに。
一番、良いのは挨拶です。
「おはようございます」「こんにちは」
返ってきた言葉に反映された声の大きさとトーンを感受し、
同じような大きさの声とトーンで返します。
「今日も良いお天気ですね」「今朝は寒かったですね」
自然な会話の中で、声の大きさとトーンの同調を調整することができます。
初対面の方なら
まず、こちらが名乗ります。
「こんにちは。初めまして。」
「こんにちは」
「リハビリの佐藤と申します。〇〇さんですね?よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「〇〇さん、下のお名前を教えていただけますか?」
「△△と言います。」
「△△さんですね。漢字はどういう漢字を書くんですか?」
「え〜っと、鉛筆ある?」
ご自身のお名前は、まさしく長年慣れ親しんだものです。
あなた自身のことを知りたいという気持ちを言外に伝えることもできます。
これだけ会話が成り立てば、
声の大きさとトーンを把握し、同調させる機会を十分に確保することができます。
また、もしも、自身の名前という慣れ親しんだものでも、
うまく説明できなかったり、尋ねたことの枠組みで答えられなかったりすれば、
言語理解力が低下している恐れが高くなりますから、そのスクリーニングもできます。
もちろん、その日その時の体調もありますから
会話の初めに、まず、その方の声とトーンを把握し、
日を改めて再確認することから始めると良いと思います。
「認知症のある方の話をきちんと聴く」ことの前提として
声が無自覚に伝えてしまうことがあることをきちんと理解する。
そして、自身の声の大きさとトーンに自覚的になる。
相手のその時々の声の大きさとトーンに鋭敏になり、同調させられるようになる。
ということがもっと広まっていくと良いなぁと思っています。
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