中井久夫の言葉で
「病気になる前より良くならないと」っていう言葉があったと思います。
「病気になる前はどこか不安定さがあったんじゃないか
そんな不安定さのあった病気前よりも
もっと良くなることが本当に良くなったってことじゃないか」
というような趣旨だったと思います。
前の記事で紹介した、かきこまないトレーを使っていた方は
もともとは、かきこみ食べをしていたので
1口量を減らそうとして小さなスプーンを提供したようですが
かきこみ食べは良くならず、誤嚥性肺炎になってしまいました。
誤嚥性肺炎からのリカバリーで単に食べられるようになるだけでなく
病気になる前よりもっと良くなる
かきこみ食べをせずに自力摂取できるようになる
ということが本当に良くなったことだと思っていますし
重度の認知症のある方でも現実に前よりももっと良くなった方を多数経験しています。
ほとんどの人は
「認知症→能力低下→不合理な食べ方・誤嚥性肺炎」
という認識をしていますが
事実は違います。
「認知症→過剰努力・過剰適応→不合理な食べ方・誤嚥性肺炎」
なのです。
ここで、なぜ、過剰努力や過剰適応せざるを得ないのか
というところが最も問題だと考えています。
ほとんどの人は、まず何が起こっているのかの判断ができていない
説明しても、判断を理解できなかったり受け入れなかったりします。
少数の人が理解できたり受け入れてくれますが
次に必要なのは、適切な判断を具現化するための技術です。
技術が伴わなければ、正当な判断をカタチにして見せることができません。
判断の問題、具現化する技術の問題と二段階の問題が混在しているのですが
解きほぐして目の前でやって見せても
ごく少数のわかる人には感服してもらえますが
わからない人にはわからないものです。
ここでまた自分がわからない、できないとは認めずに否定してくる人もいます。
仕方ありませんねー。
河合隼雄は「そう」って答えてたそうです。
なるほど。なるほど。
このようなことは現場あるあるなので
認知症のある方の過剰努力や過剰適応を解消・改善できる人というのは
ごくごく少数派です。
講演やサイトを訪れてくれた人の感想で
「モヤモヤした気持ちを明確にしてくれた」
という感想をいただくことがしばしばありますが
現実に起こっていることの「判断」レベルで
無自覚でも問題意識を抱いている人は確実に増えていると感じています。
あとは「技術」レベルで具現化できる人が増えていけば!
重度の認知症のある方でも
誤嚥性肺炎の前よりもっと良くなることは可能です。
逆に言えば
良くなるはずの方がそうなっていない現実もあるということです。
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