ポジショニングの工夫とココロ


私は仕事をする前に必ず電子カルテで対象者の方の経過を
確認するようにしています。

夜のうちに何かちょっとした体調不良があったかもしれないし
寝不足になっているかもしれない。
認知症のある方の方から
「実は昨夜。。。」と教えてくれることはないので
必ず確認しています。

モノゴトには、必ず経過と背景があるので

ポジショニングもそうです。

対象者の立場からしても
今までどのようなポジショニングを設定されてきたのか
その蓄積が今の姿勢に反映されていますし
職員の立場からしても
設定通りにできない場合には、それなりの経過と背景があります。

こちらが受け取った深みに応じて
対象者の方が反応してくれていると感じています。

対象者の方は、まさしく自分ごとですから

ポジショニングに限らず
Activityの選択と場面設定や身体面のリハに
状態像把握の深みが反映されるのと同じだと感じています。

ところで
看護介護職員の勤務体制は職場によってさまざまです。
デイや訪問系の職場であれば、日勤体制で曜日ごとに異なる対象者を担当しますが
病院では変則交代勤務となっています。
病院によってはウイング固定制の職場もあるかもしれませんが
日勤でも勤務日ごとに異なるウイングを担当する職場の方が多いのではないでしょうか。

一概には言えませんが
対象者の経過を把握しにくかったり
情報共有がしにくい背景、勤務状況があるのかもしれません。

リハスタッフと看護介護間の情報伝達や共有化が困難という場合には
必ず、看護介護間でのそれらの問題があるものです。

  そういった問題が少ないという職場では
  管理職が何らかの対策をしているものです。

  対策をしている管理職であれば
  こちらが伝達の工夫・配慮をしていることに気がついて
  声をかけてくれたりします。


看護介護の中での情報伝達の不徹底が
リハスタッフとの間で表面化するというのは
残念ながら現場あるあるの一面
ではないでしょうか?

そのような状況を踏まえて
リハスタッフとしてできることは
情報伝達において伝え方への配慮だと考えています。
情報伝達が徹底されにくいという現状を踏まえて
そのような状況でも適切なポジショニングが行われるように考える。

 
看護介護職が扱う対象そのものに
ポジショニングで言えばクッションそのものに
イマ、ココでの操作を語らせるという工夫です。

経過や状態や意義の把握ができていない職員であっても
結果として設定ができるように。

そのためには、何よりも設定者自身が的確にポジショニングできること
ポジショニングに際しては
個々の方に応じて、ポイントというのがありますから
そのポイントを把握できることが肝要です。

多くの他職種は全身のアライメントを確認せずに
自身の気になるところ(股関節の外転だったり膝の伸展だったり)を
操作しようとする傾向がありますから、それを踏まえて
そうはならないように予防的に対応するという意図を持っていることも必要です。

対象者の状態像と環境因子としての職員の状況を
経過や背景を含めて認識できていればいるほど
的確なポジショニングと的確な伝達が行えます。

対象者にとって
適切なポジショニングが行える職員を増やすことになり
対象者が安楽に過ごせ、能力発揮しやすくなる時間を増やすことになります。

さらに踏み込んで言えば
「対象に工程や操作を語らせる」「場面に語らせる」という手法は
認知症のある方に対して、様々な場面で通用する方策でもあります。

近時記憶障害によって、モノゴトにつきものの経過や背景を忘れてしまったとしても
遂行機能障害によって、適切な操作が行えなくなってしまったとしても
イマ、ココで為すべきことをできるように促すことができる

それは、普遍的な考え方だからだと考えています。
だからこそ、認知症のある方への
「敬語を使う」「なじみの関係」「褒めてあげることが大事」などといった
一見正しそうでいて、その実あまり役に立たないスローガンを普及させるよりも
本質的に役立つ考え方を広めていきたいと考えています。

ただし、
本質を実践するには、地道な日々のトレーニングが必要で
その過程において、自身の未熟を嫌というほど思い知らされます。
自身の鍛錬が求められる、安易ではない方策なので
耳に優しい言葉でもありません。

過去に
常識とされている概念に対峙する概念や
まったく新しい概念が提唱された時に
必ず全否定されてきました。
古くは、ガリレオに始まり、ゼンメルワイスしかり、小笠原登しかり。。。
けれど、提唱された概念が
本当に正当であれば必ずや歴史がその正当性を証明してくれます。

ということは、彼らだけでなく、彼らの周囲に
細々とであっても伝え続けてくれた人々の存在があったということです。
そこに未来への希望があります。



  

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