無自覚の脅し文句ではなくて

 

 

月刊よっしーワールド
「ご家族に苦行をさせない」という記事を書きました。

悪気があるわけじゃなくて
善意からだろうとは思いますが
「ちゃんと食べさせないと体が弱っちゃうからしっかり食べさせて」
「ちゃんと水分を摂らせないと脱水になっちゃうからしっかり飲ませて」
という言葉は実は無自覚の脅し文句です。

リハの場面でもあるあるなのが
「歩かないと歩けなくなっちゃうよ」
「動かないと動けなくなっちゃうよ」
という良かれと思っての無自覚の脅し文句です。

歩かないには歩かない必然が
動かないには動かない必然が
食べようとしないには食べない必然が
水分を摂ろうとしないには必然があるのに
その必然に対処しようとせずに
表面的に歩かそう、動かそう、食べさせよう、飲ませようとする。。。

そのような発想ができるウラにあるのは
やればできるのにやろうとしない、甘えている、という
根本的に相手を信頼していない、という考え方です。
だから、そんなことが言えたりできたりするのだろうと思います。

歩きたくても歩きにくい
動きたくても動きにくい
食べたくても食べにくい
飲みたくても飲みにくい。。。
一番しんどいのは、目の前にいる対象者です。
そして、そばにいるご家族です。

無自覚で悪気があるわけじゃない
むしろ善意からの言葉とわかるから
抗議もしにくい。。。

今の状態は良くない
このままだともっと悪くなる
だから頑張れ

そうじゃなくて

今の状態は本来のあなたではない
でもそうしかできない必然がある
その必然を乗り越えるために一緒に頑張りましょう
そうしたら今より楽になって少しずつ良くなっていく

私はそんな伝え方の方が事実に即していると確信しています。


2 個のコメント

    • N.S on 2021-01-03 at 17:13
    • 返信

    こんにちは。
    …まさに、と思いながら読みました。
    先日訪問看護師から
    「脱水の進行」を告られ
    水分量が少ないとのことでした。

    家族(自分)は焦り、飲ませようとしますが
    目標量には届きません。
    本人は【飲みたくない】のはわかります。
    …といって、生命に関わることなので
    つい真剣になってしまう、そんな
    状況をまさに体験しています

    • よっしー on 2021-01-04 at 22:20
    • 返信

    N.Sさん
    コメントありがとうございます。

    【飲みたくない】という表面の事象の裏に、気持ちが辛くて飲む気になれない。飲みたいけどうまく飲めない。飲みたいけど疲れてしまってもう飲めない。など背景がそれぞれ異なる場合もあります。
    その背景に応じた対応が必要だと思います。

    対応が後手に回るとご本人の体力勝負となってしまいます。
    現場あるあるなのが、対応の工夫の選択肢がたくさんある時に
    きちんとした評価・アセスメントが為されず
    表面的に無理矢理食事介助をして嫌がられ拒否されてしまうけれど
    (低栄養・脱水を心配してのことだとは思いますけれど)
    表面的な強要に近い介助をして誤嚥性肺炎。。。というケースが少なくないのではないかという危惧を抱いています。
    そのような現実を少しでもなんとかしたいと強く願っています。

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