対象者の方に下記のような兆候が見られたら
それは介助者がスプーン操作を見直すべき兆候でもあります。
<開口した時>
・舌が奥に引っ込んでいる
・舌が丸まっている
・舌が硬くなっている
<食塊をとりこむ時>
・顎が上がっている
・上唇を丸めずに閉じている
・口角から食塊がこぼれ落ちる
・引き抜いたスプーンに食塊が残っている
・正面ではなく介助者の側に頭部を回旋している
<食塊が口腔内にある時>
・ためこんでしまう(咀嚼・送り込みに時間がかかる)
<食塊を嚥下する時>
・喉頭が完全挙上しない
・喉頭が複数回挙上する
これらは、見ようと思えば今すぐに誰にでも観察できることですが
たいていの場合に、上記兆候は観察されず
「見れども観えず」
視界に入っているはずなのに意識化されていません。
上記兆候は
介助する側の人の不適切なスプーン操作が原因となって
引き起こされたり、増悪されたりしている兆候です。
つまり、改善可能な状態像なのに
見落とされていて対処されていないのが現状です。
食事介助の時には
ムセの有無しか確認していない人がとても多いのが現状です。
しかも、
強く激しくムセるとすぐに食事中止を指示する職員がとても多いという問題もあります。
ですが、このような対処は合理的ではありません。
ムセとは何か?
多くの人が誤嚥のサインと答えるでしょう。
では、その時に身体がどのように働いているのでしょうか?
こう尋ねられて答えられる人がどれだけいるでしょうか?
ムセとは
確かに誤嚥のサインではありますが
同時に身体防御機能の発揮でもあります。
声帯を激しく内外転し、呼気のパワーで
気道に入った異物を喀出しようとしているのです。
「強く激しいムセ=誤嚥のひどさ」と漫然と誤認している人が多いのですが
実態は真逆です。
「強く激しいムセ=異物喀出作用の強さ」
なので、しっかりとムセきってもらうことが重要なのです。
気をつけなければならないのは
弱々しくしかムセることができない方です。
その最たる状態がサイレントアスピレーション(ムセのない誤嚥)です。
ムセに関する誤解はとても多いので
「ムセに関する誤解」で説明しています。
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