?「実習は楽しく」

 

結果として
「いろんなことを学べて楽しかった!」
となれば良いとは思っていますが
「実習は楽しく」
「作業療法の楽しさを体験させてほしい」
というのは、ちょっと違うと感じています。

厳しくしろ、苦行させた方が良い
と言うわけではありません。
念のため。

昔は
とにかく作業療法士を輩出する
卒業したら第一線で働くことを念頭にした教育が優先されてきました。

若い人には信じられないと思うけど
私が学生の頃は、3年間の学生生活で
1年次に「見学実習」として
身体障害・精神障害・小児(発達分野のことを昔はこう言っていました)を1週間ずつ3箇所
2年次には「評価実習」として
身体障害・精神障害を3週間ずつ2箇所
3年次には「総合実習」として
身体障害・精神障害・小児を2ヶ月間ずつ3箇所
実習していたんです。

その時とは時代背景も変わり
作業療法士を取り巻く環境も変わってきています。

昔は作業療法士になりたい、なって叶える自身の夢と理想がありましたが
今は一つの職業として選択肢に入っている
進路指導の先生や親から勧められたことが直接のきっかけという学生も増えました。

実習指導のあり方や方法論も変わり
卒後養成の問題がそう遠くない先に明らかになると感じています。

それはもう、良い悪いではなくて
この現実を受け止めて、ではどうするか。と考えるしかないと思うのです。

今は、インターン実習でもせいぜい担当患者さんは1ケースですよね。
提出すべき課題もほとんどないし。
担当といっても、CCS:クリニカルクラークシップが導入されているから
実際は、評価治療の一連の過程を
責任意識を持って担当する機会がないと言っても過言ではないと思う。
学生である、有資格者ではないという法律的なことを考えれば
妥当な方法かもしれませんが。。。

その分、実習指導者の頭の中を学生の手足が実行する過程を通して
実習指導者の思考回路と実践を疑似体験する過程となったとも言えるでしょう。

この過程は
次の学生自身による主体的体験学習の場が用意されていれば
とても親切な体験学習の提供とも言えますが
卒前の養成過程にその場はありません。

卒後養成は
個々の職場の力量に応じて、きっちりと卒後養成のシステムを作っているところと
そうでないところと二分されていると思います。
協会主催の研修では、机上学習と事例報告、グループワークが中心となっています。
 グループワークは良い面もあるけど
 教えるべきことは教えられる人がきちんと教えないといけないのに
 グループワークで仮の達成感を与えてしまっているデメリットもあると考えています。
 これについてはまた別のところで。

そして多数の各種団体(営利団体も非営利団体も)主催の研修会は山ほど開催されています。

最も重要な
安全な環境下において、
対象者中心に考える
主体的にPDCAを回す体験学習を経験しにくい構造となっています。

安易なハウツー的思考態度の蔓延の遠因にもなっていると考えています。

実習において何をどのように体験学習しておくべきか。

昔は実習で直面・体験できていたことが
それは学生にとっても指導者にとっても厳しいことでしたが
今は実習で直面体験する機会が限られ
むしろ無自覚な双方の要請によって機会を忌避し先延ばししている。
とも言えます。

最も根本的な
対象者はどれだけ良くなりたいと切実に願っているか
ご家族はどれほど心配して良くなることを応援しているか
援助と強制・支配のすり替わりやすさ
善意に基づく言動が適切とは限らないこと
などなどを学生のうちに体験しておかないと
忙しい社会人となり、
ケースを担当することになり
結果を求められると同時に
思ってもいなかった厳しい感情処理を求められることになる
そういう事態がもうあちこちで生じているのではないでしょうか。

卒後養成の在り方が
本当に問われるようになっているのではないでしょうか。

実習は楽しく
作業療法の楽しさを体験する
と言うのは、将来の作業療法士確保のための外向きのPRとしては良いけれど
作業療法の質の向上・担保としては、どうなんでしょう?

対人援助職としての在りよう、その厳しさもしんどさも喜びも
安全な環境下で実感しておくことができると
職業人として目の前のことに忙殺されるだけではなくて
(それは無意識下で忙殺されたがっている面もあると思います)
ちょっと踏みとどまれることもあるんじゃないかと思っています。

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