「悪いことはしないように」


自分にとって当たり前になってしまった言葉(考え方や臨床姿勢)って
忘れてしまったりするものですけれど
DCゼミの勉強会で
かつて私が「悪いことはしないように」って言っていたことをずっと心に留めて実践してくれている
ということを聞いてすごく嬉しくなりました。

自分が対象者の方に対して
良いことをしよう、とするのではなくて
悪いことはしない、ように向き合う。

それが
ポジショニングでも食事介助でも
Activityでも身体的なリハでも
BPSDへの対応でもなんでも。

確かに一時期よく言っていました。

当時はたぶん老健で働いていて
内科的な状態に指示をもらえる医師がいなくて
認知機能が低下している方はたくさんいるし
どの程度運動負荷をかけることが適正なのか
本当に怖かったことを覚えています。

ないものねだりをするわけにはいかないし
かといって、何もしないわけにはいかないから
絶対安全な範囲をバイタル測定しながら
歩容や表情を確認しながら関与していたことを覚えています。

認知症のある方への対応も
今ほど自分の中で明確化できていなかったから
本当に困っていました。
何をどう考えて対応したら良いのか
まったくわかりませんでした。
だから、自己検証するしかなかった。

「良いことをしよう」という意識は
善意であることは疑いませんが
「地獄への道のりは善意で敷き詰められている」
「地獄には善意が満ちているが、天国には善行が満ちている」
というヨーロッパの諺の通り
独善に陥ったり、自身のスローガンの実践にとどまったり
PDCAを回すことを怠ったりしがちです。
 
一方で
「悪いことをしないように」という意識は
対象者本意の視点から始まります。
対象者にとっての悪いことというのは対象者一人一人によって異なるからです。
こちらの独りよがりや強制を予防することができます。

いろいろな人の実践を見聞きし
いろいろな経験を積むにつれ
「悪いことはしない」ように心がける実践から始めることができて
本当に良かったと思う今日この頃ですが
当時は、その意味が今ほどはわかっていなかったと思うのです。
出発点を間違えずに本当に良かった、ラッキーだったと思っています。
その選択をしたのは紛れもなく私自身ではありますが
何かの出会いのタイミングのちょっとしたズレの蓄積で
そのような選択ができなかった可能性だってあったかもしれず
そう思うと怖さで身震いするほどです。

いろいろなところで言っていますが
スティーブ・ジョブズの「意図こそが重要」という言葉は真実です。
認知症のある方への対応についても言えることです。

認知症のある方へどう対応したら良いのかわからない
と困っている人は、困ることができる人でもあります。
困ることすらできない人になってはいけない。
ピンチはチャンス。
今までとは違う実践、認知症のある方に対して悪いことはしないように
心がける実践に切り替えるチャンスです。


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