検査結果を対応に活かす


目標設定の記事で
評価と治療の乖離
検査結果を対応に活かせていない という内容を書きました。

せっかくですので
もうちょっと具体的に書きますと
HDS-R18点の方とHDS-R3点の方に同じ声かけをしているとか
構成障害のある方に折り紙を提供して
「ここをこうしてこうやって」と説明している
といったことは、認知症のある方や高齢者を対象とした現場でよくよく行われています。

しかも
それで指示通りに実行できないと
簡単に「疎通困難」とか「認知症だから」と言ったり
折り紙のほとんどをセラピストが仕上げて「頑張りましたね」と言ったり
認知症のある方の手をセラピストが動かしている状態にしていたり
というのも現場あるあるです。。。

本当にそれで良いのかなぁ。。。?
 
うまく言語化できないけど
「どこか違う」「何か良くない」と
漠然とした違和感を抱いている人も少なからずいると思います。

HDS-R18点であれば、遅延再生に一部得点できたりヒントで答えられることが多いでしょうし
HDS-R3点であれば、遅延再生はヒントを出しても答えられないケースが多いと思います。
つまり、近時記憶障害の程度が違う、記憶の連続性が異なるので
リハ場面で諸々の説明をする時には配慮が必要です。
HDS-R18点の方には、最初に1回説明するだけで「何をどうやるのか」覚えていられても
HDS-R3点の方には、動作干渉や時間干渉によって説明を忘れてしまうので
ひとつ工程を実践し終えるたびに説明を繰り返す配慮が必要なことがよくあります。

構成障害とは
全体と部分、部分と部分の位置関係を認識し再現する能力の障害
のことですから、隣にいるセラピストの折り方と自身の折り方を照合させながら動作する
というのは、できないことをさせていることにもなりかねません。
再現できなくても認識できる方も大勢いますから
「自分がやろうとしてもできない」体験を反復強調していることにもなりかねません。

もちろん、このような対応をしているセラピストに悪意があるわけではなく
単に知識がなかったり、思考過程そのものについて学んできていないことによって
本当は適切な対応でないことを自覚できていないに過ぎません。
だから、厄介とも言えますが。。。

HDS-RやMMSEをすることが評価でもなければ
立方体透視図模写テストや五角形模写課題をすることが評価ではありません。
検査=評価ではないのです。

HDS-Rや立方体透視図模写テストなどの検査は、
普段能力低下に直面せずに暮らせている人に対して
「できない、わからない、困った」ことに直面させる体験でもあります。
そのような辛い体験をさせてまで得た結果なのだから対応に活用しましょう。

評論家なら、
「HDS-Rが1桁で重度の認知症」
「立方体透視図模写テストが全然できなかったから構成障害重度」
と宣って終わりで良いでしょうけれど
私たちは評論家ではなくて、援助者なのですから。

それら検査結果を踏まえて
「じゃあ、どうするのか」が問われているのです。
そして
「じゃあ、どうするのか」を具現化できるためには
能力を見出し活用することが必須です。

そして
それって、実は認知症のある方に限らないと思うのです。

 

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