ADLは再認を強化しやすい場面

 

 
ADLは、特定の場所で特定の行動を繰り返し行うので
体験を通して再認を促しやすい
再認を強化しやすい場面とも言えます。

再認
プラスにもマイナスにも働きます。

チカラは同時に両方向には働かない
 
プラスならプラス、マイナスならマイナスの
必ずどちらかに働きます。

たとえ、重度の認知症があったとしても
視覚的刺激を通して、あるいは体験を通して、
再認することができる方はたくさんいます。

「認知症だから食べさせないと食べることを忘れる」
「認知症だから歩かせないと歩けなくなっちゃう」
などと言う人もいますが
私はそんなことはないと感じています。

むしろ、そのような誤認をもとに
無理矢理食べさせるから食べられなくなる
無理矢理歩かせるから歩けなくなるし
焦って誤介助をしたことによる誤学習の方が
よっぽど多いと考えています。

食べないには、食べないなりの必然があるし
歩かないには、歩かないなりの必然があります。

そこをきちんと観察・洞察せずに
表面的に無理矢理食べさせたり、歩かせたりするのは
人としてどうかと思いますし
合理的でもありません。

そして
表面的に無理矢理食べさせたり、歩かせたりするたびに
嫌な思い、辛い感情を繰り返し体験し
また、それらを体験を通して再認することになるので
二重の意味で不適切で良いことが何もありません。

ただし
体験を通して再認できるからこそ
介入当初は大変でも、
もう一度食べられるようになったり
もう一度歩けるようになったりする
のだと感じています。

硬く口を閉じて開口しようとしなかった方
ALB2.1の方
「もう歩くのは無理です」と言われた方。。。
他にもたくさんの方を担当してきました。
いずれも、介入当初の拒否はとても強かったけれど
その必然や意味がわかるので、どうすべきかも洞察できました。
 
体験を通して再認できる方だから
異なる介入に対して
その介入がまさしく「援助」なのだと実感してもらえると
介入を重ねるごとに「できる」体験を積み重ね
再学習が可能となります。

ALB2.1で食事介助への拒否が強かった方は
入院前の施設では
「ご自分の世界に入り込んでいる」「意思疎通は無理です」
って言われてきた方でした。
 
でも、食べられるようになってきた時に
(それでは失礼します)と退室しようとしたら
「どうもありがとう。気をつけて帰るんだよ。」と
声をかけて下さいました。

自身の世界に入り込んでいるのは、どちらなんだろう?
と思ったものです。

立ち上がりや食事介助、口腔ケアなどの場面での拒否は
対象者にとっての必然なのですが
その必然を観察・洞察せずに
表面的に、「拒否されないように介助しよう」という視点では
対象者のネガティブな再認を強化することになってしまいます。

「拒否されないように介助しよう」という視点は
すべてを認知症の病状のせいにしているからです。

拒否の強い方は
過去の不適切な介助を再認した結果の意思表示
ということが多々あります。

だからこそ
今、適切な介助を体験を通して再認の蓄積を図る意味があります。

ピンチはチャンス

修正すべきは
認知症のある方の言動ではなくて
私たちの関与のあり方だったりするのです。

関与のあり方とは
「優しく」
「否定しない」
などといった心理的な意味ではなく
(それらは対人援助職の基本ではありますが)
障害と能力を的確に洞察し援助しようとする臨床思考・態度のことです。

 

 

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